「スピッツ論」伏見瞬著
30年以上も活動を続け、今も現役のポップミュージックのバンド、スピッツ。結成はバンドブーム最中の1987年。翌年、新宿ロフトでのワンマンライブを経て91年、メジャーデビューする。
湾岸戦争が始まり、バブルがはじけ、金融機関が破綻するという混迷の時代だった。
小野島大は「ミュージック・マガジン」で、スピッツの初期の作品がこのような時代の終焉を予言していたと喝破する。スピッツの音楽の特徴は「分裂」である。「僕の天使マリ」や「流れ星」などの楽曲には、陽と陰、希求と絶望、陶酔と虚無、現在と非現在といった対極的な要素が詰め込まれている。その分裂の強烈さが聴く者のハートをわしづかみにし、「誰も触れない」位置にスピッツを押し上げたのだ。
楽曲の歌詞を子細に分析して、スピッツの本質に迫る。
(イースト・プレス 1870円)