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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

BOOK SHOP TRAVELLER(祖師ヶ谷大蔵)110の棚貸しと新刊書のミックスで5000冊!

公開日: 更新日:

日本の小さな本屋さん」「東京わざわざ行きたい街の本屋さん」などの著者「BOOK SHOP LOVER」こと和氣正幸さん(38)。彼がマジで本屋を始めたよ──と聞き、飛んで行った。むむ? BOOK SHOP LOVERさんが「BOOK SHOP TRAVELLER」を? 少しこんがらがる。

「BOOK SHOP LOVERは、いつか本屋をやりたいと思って視察がてら全国の小さな本屋さんを回ってブログを書いてたときから名乗っていて、今はライター業などを含めた僕の屋号。で、BOOK SHOP TRAVELLERは、そのときのブログ名から……」と和氣さん。下北沢で試運転後、ここは今年4月オープン。「棚貸し(本を売りたい人に棚を貸す)」形式と新刊書店のミックスで、合計18坪に約5000冊。

 おー。と、いきなりうなった。入ってすぐの平台に、「遠い記憶の中の街」「映画音楽はかく語りき」それに私も出版されてすぐに買った西舘好子著「日本の子守唄」など。骨太の小出版社、ユニコ舎のフェアをやっていたのだ。

「貸し棚」は約110。つまり約110人の棚主さんがいて、「ただただ本好きの人、一箱古本市に出店している人、著作者や翻訳家、小出版社がそれぞれ4分の1くらい」だとか。文芸、冒険文学、旅行、短歌、海外文学、絵本などなど棚によってジャンルがまちまちなのに、なんだか品がいいなーと感じたのは、「フェイク本とヘイト本を置かないことと、仲間で一緒に店を作っていく意識がお約束事」とのことだからかも。

 心憎いのは、その棚主が並べる本の近くに、同じジャンルの新刊書が配置されていること。おまけに、2階に和氣さん目利きの新刊書のみを置く、秘密基地のような8畳間あり。「この本面白くて」と「亡命ロシア料理」を手に取り、「ロシアからアメリカに亡命した人が書く料理エッセーですが、実はぼやきいっぱいの文明批評なんですよ」と話してくれた。

◆世田谷区祖師谷1-9-14/小田急線祖師ケ谷大蔵駅から徒歩2分/12~19時(土曜20時まで)、火曜・水曜休み

ウチで売れている本

「なぞなぞ えほん ぴぅ!」マリア・ホセ・フェラーダ文 マグダレナ・ペレス絵 星野由美訳

「新刊の絵本は『みどりのほんや』さんという棚主さんに選書をお願いしていて、その方のチョイスなんですが、よく売れるのがこのチリの仕掛け絵本。羽根をヒントに『だーれだ?』とページをめくるとスライドし、羽根の持ち主であるコンドルやフクロウなど7種の鳥が姿を現します。色も描き方も深みがあるのは、チリのお国柄が関係しているのかな」

(WORLDLIBRARY 1980円)

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