「弾左衛門と車善七」塩見鮮一郎著
「弾左衛門と車善七」塩見鮮一郎著
弾左衛門とは、人名であり、明治維新で廃された江戸時代の職名でもあるという。町奉行の手伝いで、警備・牢番・処刑などの御用を務める被差別民の集団の棟梁が、代々、その名を名乗ったそうだ。
その前史は馬牛に関するプロの集団と思われ、彼らを組織することを考えた平清盛が弾左衛門に「こじき」一般を管理させた。頼朝もそれを受け継ぎ、鎌倉極楽寺門前に土地を与えた。
このシステムを家康も採用し、弾左衛門に穢多身分を支配させ、八百八町の各町内の安全と清掃の役を課した。それは貧民救済の制度でもあったという。そして弾左衛門の配下で、乞食、くず拾い、牢屋人足を管理したのが非人頭の車善七だったという。
ふたつの集団の成り立ちと歴史を追いながら、江戸時代の被差別民の実態を描く歴史テキスト。 (河出書房新社 1320円)