「文学が裁く戦争」金ヨンロン著
「文学が裁く戦争」金ヨンロン著
終戦後、A級戦犯を裁いた東京裁判と、BC級戦争犯罪裁判が行われ、帝国日本の戦争犯罪が厳しく問われた。一方で、多くの文学者が戦争裁判を繰り返し描き続けてきた。なぜ彼らは既に判決が出ている裁判を文学の形態で呼び戻すのか。
著者は、裁判の過程で全ての暴力が明らかにされるわけでなく、過去の法廷ではいかなる席も用意されていなかった被害者たちが、沈黙を破り、告発をする限り、裁判はどういう形であれ、幾度となく呼び戻されると指摘。作家はこのような必要に迫られて裁判を描き続けたのだろうという。
本書は、川端康成の東京裁判傍聴記をはじめ、松本清張の「砂の審廷」や村上春樹の「羊をめぐる冒険」など戦争裁判を描いた多くの小説を読み解きながら、文学は戦争を裁くことができるのかを問う。 (岩波書店 1056円)