「コロナと潜水服」奥田英朗著
「コロナと潜水服」奥田英朗著
コロナが蔓延し、会社員の康彦も在宅勤務に。共働きの妻は、妊娠中だが出勤せざるを得ず、保育園が休園中の息子・海彦の世話は康彦が担う。
ある日、海彦が岐阜に住む康彦の母親に電話して今日は外出するなという。数日後、母親が参加予定だったコーラスサークルでクラスターが発生。同じようなことが続き、康彦は息子に予知能力があるのではないかと疑う。
そんな折、仕事で外出した康彦が帰宅すると海彦が近づいてこない。察した康彦は、自主隔離に入る。しかし、日々の子育ては自分の担当だ。保護服はどこも品切れで、康彦は妻が代わりにと古道具屋で買ってきた潜水服を着て息子を散歩に連れ出すことに。(表題作)
それぞれの人生に起きるささやかな奇跡を描く切なくも笑える短編集。
(光文社 770円)