「そして誰かがいなくなる」下村敦史著
「そして誰かがいなくなる」下村敦史著
ミステリー界の大御所にして覆面作家、御津島磨朱李が、森の奥深くに贅を尽くした洋館を建てた。さらに誰にも見破られない隠し部屋まで設けている。
そんな邸宅のお披露目に、ミステリー作家が4人、文芸評論家と御津島の担当編集者、名探偵の7人が招待された。最初のうちは和やかに過ごしていたが、御津島が登場し「今夜、あるベストセラー作品が盗作であることを公表する」と告げると空気は一転。さらにどこからか絶叫が聞こえ、御津島の姿が消えてしまった。
客人たちは互いに疑いのまなざしを向けつつ、御津島の居場所を推理していく。彼は殺されたのか、全員のアリバイ、動機、邸宅内の動線は……。外は吹雪で移動は不可、携帯もなく、身動きが取れない“クローズド・サークル”で、一体何が起こっているのか。
著者が実際に建て、暮らしている洋館を舞台に描いたという、前代未聞のミステリー。間取り図はもちろん、豪華な書斎やリビングなど室内写真も各所に掲載されているため、読者は写真を見返しながら、作中の人物とともに犯人捜しを楽しめるだろう。部屋の鍵がすべて抜き取られ、メモが発見されるなど、何重にも張り巡らされた伏線に、最後まで翻弄される。
(中央公論新社 1980円)