碓井広義
著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

骨太な物語、絶妙な配役と演出…「下町ロケット」の黄金三角

公開日: 更新日:

【連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 今期ドラマの真打ち登場である。TBS系日曜劇場で放送中の「下町ロケット」、原作は池井戸潤の直木賞受賞作。脚本・八津弘幸、プロデューサー・伊與田英徳、演出・福澤克雄の「チーム半沢」が、期待通りの仕事を披露している。

 主人公はロケット開発の研究員だった佃(阿部寛、堂々の座長芝居)。打ち上げ失敗の責任をとって退職したのが7年前だ。今は父が残した町工場の社長を務めているが、突然の危機に襲われる。大手取引先から取引中止を言い渡され、ライバルのナカシマ工業から特許侵害で訴訟を起こされ、さらに巨大企業である帝国重工が特許の売り渡しを迫ってきたのだ。その上、社内には夢を追い続ける社長への不満もくすぶっている。佃はこの内憂外患をどう乗り切るのか。

 まず、この骨太な物語を、予算も手間もかけてきっちり映像化していることに拍手だ。種子島でのロケット打ち上げから、画面が社員で埋め尽くされた大企業のセレモニーまで、何の手抜きもない。次にニヤリとさせられる絶妙なキャストだ。佃製作所の経理部長に立川談春。ナカシマ工業の顧問弁護士が池畑慎之介。そして佃側の弁護士は恵俊彰(好演)。しかも聞き覚えのある、朗々たるナレーションは元NHKの松平定知だ。

 その時、歴史だけでなく下町も動く。ストーリー、役者、演出のゴールデントライアングルで、大人が見るべき一本になった。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

  3. 3
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  4. 4
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  5. 5
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

  1. 6
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  2. 7
    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

  3. 8
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  4. 9
    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異