同志社女子大・影山貴彦氏 エンタメは不要不急でも不可欠
――テレビは「総集編」という名の再放送が増えています。
今、大学の教え子たちが「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系)の再放送や「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)を初めて見て面白いと言っています。昔見たときと今とでは解釈が変わったりして、新たな視聴者に感動を与えている。時代を超えた“テレビ番組の普遍性”を伝えるいい機会にもなっていると思います。
――ドラマは撮影が中断し、「もうすぐ放映開始」という状態が続いています。
いつまでも「カミングスーン」で引っ張り続けるのは、視聴者を無視したテレビの傲慢さを感じざるを得ません。何回分まで収録を終えているのか、視聴者が作品にどの程度期待していいのか情報を開示すべき。その点でNHKが朝の連続ドラマと大河の休止を伝えたのは勇気のあることだと思います。ただ公共放送のNHKと違って、民放には視聴率という評価問題がある。僕もテレビの現場にいたときは常に視聴率にとらわれていましたし、ビデオリサーチという組織を否定する気はありませんが、有事のときは視聴率を公表しないなど、新たなルール作りが必要ではないかと思います。
――小泉今日子、浅野忠信、きゃりーぱみゅぱみゅらが検察官の定年を引き上げる「検察庁法改正案」に反対を表明するなど、芸能界も大きく変わりました。
法案が見送られ、「ツイートデモ」がムダ死ににならなかったということは、半径数メートルのことしか関心のない若者に“知的なこと、政治的なことに関心を持つことがカッコいい”と思わせました。この功績の背景には、タレントが芸能事務所から独立しても活動できるようになり、個としての人間性を発信できる素地もあった。また、数年前からX JAPANのYOSHIKIさんが「アーティストである前に、ひとりの人間である」と発信したあたりから、発信する側と受け取る側双方の意識が変わりつつあったことも無縁ではないでしょう。さらに「ツイートデモ」を封じ込められない安倍首相の日和見的な、手腕のなさというのもある意味“追い風”になったと思います。