「ゆーとぴあ」ホープ師匠 み~んないなくなったけれど趣味は「生きること」

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「ゆーとぴあ」ホープ師匠(お笑い芸人/71歳)

「ゴムパッチン」「よろしく~ねっ!」のギャグで人気のお笑いコンビ「ゆーとぴあ」のホープ師匠は人生100年を目指して、再びハチャメチャに(?)元気に活動している。「趣味は生きること」だ。

  ◇  ◇  ◇

 僕と一緒にやってきた人がみんな倒れたり死んじゃったりして、いなくなっちゃったね。僕も病気の連続よ。大腸ポリープを取ったのが14年前。この時は8つ取ったうち3つに悪性腫瘍が見つかった。大変だったのは60代になってから。まず肺がんが見つかり、立て続けに大腸がん、胃がん、小腸の珍しいがんだという空腸がんですごい量を切った。ボロボロ、まさに満身創痍ってやつです!

■60代で4つのがん闘病

 でも、死ななかったから仕事が急に増えちゃってね(笑い)。周りからは「死ぬってどういうもんですか」とか「まだ生きてんですか」「ダメだよ、生きてちゃ」とか突っ込みがすごい。たけちゃん(ビートたけし)が出てる番組で「もう(ゴムパッチンの)ゴム噛めないんだろ、歯がなくなってゴムを持ってかれちゃうんだろ」と一言いった時も、周りからの反応がすごかったね。

 でもね、言われるほど元気が出てきて、ギリギリのところで助かっているのは何かあるわけだから、これからはもっと変わったことをやりたいと思うようになった。

 だいたい芸人の世界はまともじゃないから。東京ぼん太さんや三波伸介さんといった大先輩は、芸人は何を犠牲にするかだと言っていた。お金が儲かって、家庭もうまくいって、子供も育つ。そんなことがあるわけないじゃないか。芸人になったら何かをなくす。最後は悲惨かもしれない……。

レオナルド熊師匠の開き直り!

 レオナルド熊師匠から最初に学んだことは「芸人はまず嫌われることなんだよ」。客がドン引きしてからが始まり。師匠はストリップ劇場で客と喧嘩するわけ。「男は引っ込め」「女出せ」とヤジが飛ぶ。腹巻きをして人相が悪い熊師匠が「おまえら、帰れ。だれにもの言ってるんだ」と脅かし、腹巻きからカネを出して「俺はカネはあるんだよ。踊り子はみんな俺のこれ(小指)だぞ。俺が怒っちゃったら、パンツ脱がないよ」。すごい芸だなってみんな拍手です。

 熊さんからは一緒に旅をした時もいろんなことを教わった。

 例えば女性に関して。奥さんは自分のものじゃない、社会から借りてんだ、だから返さなきゃいけない。その時は洗ってから返すんだよ、洗ったら新品だって。自分の彼女がストリップやっても見せるだけなんだから、焼きもちを焼くんじゃない。生きていくというのはそんなものなんだとか。これだから悲惨な死に方をするわけですよ、芸人は。毎日そういう発想を教育されて、人を愛するってなんだろうって、わからなくなっちゃったけどね(笑い)。

 たけちゃんの師匠の深見千三郎さんもすごかった。浅草・東洋館の座長をやっていた人で「受けなくてもいい」と教えていたから。だから、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」なんてナンセンスなギャグが生まれて、逆に受けたわけです。師匠は反面教師。こうなっちゃいけないというのを率先してやってくれる。それが勉強になるんです。

 でも、今はもう時代が全然違ってるでしょ。そこをどうやるかがこれからのテーマ。仮に100歳までならあと28年もある。まだ先は長いから青春に返りたい。これまで映画にも出た、現代劇もやった、リポーターもやった、ゴムパッチンもよろしく~ねっ! のギャグもやった。やっていないのは何か。考えてみたらロックとか演歌の歌の世界。できれば若い人と一緒にやりたい。

 6月に、僕の人生をテーマにしたロック調の曲「人生100年を噛み締めろ」をYouTubeでやってます。還暦過ぎても落ち着かない、古希を過ぎてもだらしがない、喜寿や卒寿でエロ爺……いいでしょ。ハッキリ言って、売れないと思うけど(笑い)、それでもいろんなことを夢見るから文化が生まれ、ヒットすることもある!

 演歌はずっと日本に住んでいる31歳のフィンランド女性(トリ・テレスウィーク)とのデュエット曲「夫婦綴り」。これは「浪花恋しぐれ」のゆーとぴあ版という感じのベタな演歌で、公開はこれからです。

「浪花恋しぐれ」の世界はいいよね。これまで僕は年寄りを演じたことがなかった。できれば若いネエちゃんから年取った僕に「遊びなはれ、あんたが好きや」と言われてみたい。この曲では僕が30代の外国人から「私を捨てないで」と言われるわけ(笑い)。「ざまあみろ、年寄りはモテるんだよ、大事にしろ」なんてね。年寄りはある程度わがままを言っても許されるという世界をつくりたいよね。

■「俺は俺のために生きる」ビートたけしを尊敬する

 趣味は何かと聞かれた時は「生きること」と答えるようにしています。

 元気に夢を持って生きていく。ただし、期待しないから趣味。若い人は期待しちゃうでしょ。こんなに努力したと思っちゃうから、挫折したり落ち込んだりする。

 一番尊敬するのはたけちゃんですね。若いカミサンをもらった。73歳で結婚と聞いた時は正直負けた! と思った。芸人にとっては夢のような話です。離婚して慰謝料を払い、嫁、子供、孫のために生きない。俺は俺のために生きるというのは素晴らしいことだと思います。

 最後にこれだけは言いたい、老人に愛を!

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

※YouTubeのミュージックビデオ「人生100年を噛み締めろ」(作詞は放送作家・坂内馨一、作曲はホープ師匠の弟子の北脇貴士が担当)。同「夫婦綴り」は今秋に公開予定。

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