桧山珠美
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桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

松坂慶子が“ムショ活”、大地真央は“世直し女医”に 名コメディエンヌ2人が土曜夜ドラマで好演

公開日: 更新日:

 8日の土曜ドラマ「一橋桐子の犯罪日記」(NHK)を見て「その手があったか!」と将来への不安が少し和らいだ。これもひとえに松坂慶子のおかげかもしれない。

 松坂演じる主人公の一橋桐子は70歳の独居老人。3年間一緒に暮らしていた唯一の親友(由紀さおり)が亡くなり、年金とパチンコ店の清掃のパート代だけでは家賃も支払えず、ボロアパートに引っ越し。身寄りのない老人に世間は冷たく……。世の中に絶望し、刑務所に入ろうと“ムショ活”を始める。

 昨今、終活ばやりで週刊誌などでもやたら終活をあおってくるが、店じまい感が強くどうにも気がめいる。その点、ムショ活はアクティブだ。家賃タダ、3食付きの刑務所をついのすみかに定めた桐子が、なんとか人さまに迷惑をかけることなく刑務所に入る方法はないかとチャレンジする姿がおかしい。シリアスな題材だが、ユーモラスに描かれているのでスッと入ってくる。思い詰められた桐子の心情もわかるし、これは他人事ではないな、と……。

 第1話は「娑婆に未練なし」。孤独な老人が刑務所に入る方が幸せかもと思ってしまう日本ってどうなんだ、という問題提起を大上段ではなく、遊び心をもって描いている。なにより桐子を全力で演じる松坂慶子が素晴らしい。上品でおっとり、世間知らずの桐子にぴったりだ。

 偽札作りを勧められてコンビニのコピー機で紙幣をコピーしようとするなんてありえない! と思いながらも松坂が演じるとリアリティーが増す。「愛の水中花」のバニーちゃんの面影はないが、変わらず可憐で華がある。桐子のパート先、パチンコ店の上司でムショ帰りの噂があり、桐子のムショ活の指南役となる久遠(岩田剛典)との関係も気になるところ。

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