箱根駅伝完全Vの青学・原晋監督 祝賀会で“トークバトル”

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「自分はファーストペンギン」

 6日に青山学院大駅伝部・箱根駅伝連覇&完全優勝の祝勝会が行われ、その席上で「箱根を連覇したことで監督の発言がより受け入れられるようになりましたか?」と聞かれた原晋監督(49)。

「日本の陸上界は学閥で動いている部分もありますし、まだまだ新参者に過ぎません」と言いながら「これからも結果を出し続け、私たちのやり方が正しいことを証明したい」と力を込めた。

 祝勝会でスポーツジャーナリストの二宮清純氏(55)は、自ら「異端児」と公言してはばからない原監督に「世の中を変革するのは“若者・バカ者・ヨソ者”です。もちろん原監督はバカ者ではありませんが(笑い)、旧態依然としたところも残っている業界を変えて欲しい」と声を掛けた。

 中国電力陸上部1期生の原監督はケガもあって27歳で引退し、04年に青学の監督に就任するまでの10年間、営業マンとして身を粉にして働いた。

 久しぶりに陸上の現場に戻って愕然とした。

「腕立て伏せを何百回やるとか、非科学的な準備運動を延々やるとか、10年前と何ひとつ変わっていなかった。長距離界の指導者は、自分の知識や経験を最優先し、周囲の言葉に耳を傾けたり、新しい指導法を取り入れたり、そうした部分での効率性が悪かった」

 たとえば高校には、父兄が聞いたら驚くような指導者もいる。原監督が沈痛な表情で言った。

「選手をスカウトしようと某高校の監督に話を聞いたら『進学先は決まっている』と言われた。ところが進学先は決まっておらず、父兄に情報を知らせないで自分の出身高校、出身大学の学閥を最優先して進学先を決めようとしていた。どこの大学に進めばレベルアップするのか、そういう“生徒の将来を思って送り出す”という発想のない指導者が見受けられることが、残念でなりません」

 青学大駅伝部監督に就任後、中野ジェームズ修一氏(44)の著作を読んで感銘を受けた。

「長距離界にフィジカルトレーナーは無縁の存在でしたが、彼の方法論を信じて1年間やってみようと連絡を取りました」

 青学のフィジカル強化担当として箱根連覇に大きく貢献した中野氏。原監督と出会った当時を思い出しながら言った。「原監督は『ボクはコアトレーニングの素人なので中野さんにすべて任せる。ボクにも教えて下さい』とおっしゃった。予想外の言葉に驚くと同時に身が引き締まる思いでした」

 中野氏のコメントを引き取り、二宮氏が言う。

「原・中野体制の勝利のメソッドを取り入れることで日本の長距離界に化学変化が起こることもあるのではないか。しかし、いまだに『原や中野って何者なんだ?』と言う人がいることも事実」

 祝勝会には「島耕作シリーズ」でお馴染みの漫画家・弘兼憲史氏(68)も姿を見せた。

 自他ともに認める大の駅伝ファンの弘兼氏が「箱根駅伝をピークに持っていく選手が多く、燃え尽き症候群もあってか、マラソンにステップアップしていかない」と疑問を呈した。

「そもそも駅伝を陸上長距離の《強化の柱》に据えてはいけない」と原監督はこう続けた。

「強化の柱は、あくまでトラック競技などで覇を競い合う日本陸上選手権です。駅伝は新しい陸上ファンを呼び込み、競技人口を増やすための“影響力のある人気コンテンツ”という役割を担っていくべきだと思います」

 箱根駅伝人気も手伝って青学大は一般受験生が増加傾向にある。大学経営の面でも、駅伝の箱根連覇は貢献大なのだ。

「特別ボーナスをもらいましたか? なんて冗談交じりに聞かれることもありますが、そういうものは一切ありません。批判も耳に入りますが、自分はファーストペンギン(群れで行動するペンギンの中で魚を取るために最初に海に飛び込める勇気のあるペンギン)タイプです。注目されることを喜びに変え、これからも信念を曲げず、日本陸上界に良かれと思ったことを積極的に発信していきたいと思っています」

▽原晋(はら・すすむ) 67年生まれ。広島県出身。世羅高-中京大-中国電力陸上部。引退後にサラリーマン生活を送り、04年に青学大陸上部監督に就任。著書に「魔法をかける」(講談社)など。

▽中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち) 71年生まれ。フィジカルトレーナー。原監督との共著「青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」で体幹トレーニングを図解した。

▽二宮清純(にのみや・せいじゅん) 60年生まれ。愛媛県出身。スポーツジャーナリスト。近著に「最強の広島カープ論」(廣済堂)「プロ野球の名脇役」(光文社)など。

▽弘兼憲史(ひろかね・けんし) 47年生まれ。山口県出身。漫画家。筋金入りの駅伝ファン。代表作に「島耕作」シリーズ、「人間交差点」「黄昏流星群」など。

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