柔道66kg級の大一番「丸山城志郎vs阿部一二三」の深い因縁

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過去の対戦は丸山の4勝3敗も延長戦6度

「柔道界では『日本刀vs鉈』とも言われています」

 こう話すのは柔道に詳しいノンフィクションライターの柳川悠二氏だ。

 日本刀のように切れ味鋭い技を武器にする丸山城志郎(27=ミキハウス)と、鉈の如く豪快で力強さが魅力の阿部一二三(23=パーク24)。

 この2人が東京五輪の切符を争う柔道男子66キロ級代表決定戦が13日に講道館大道場(東京・文京区)で行われる。

■口をきかない

 両者はこれまで何度も火花を散らしたライバルで、深い因縁がある。2人は口をきかないともいわれている。初対決は2015年11月。天理大4年生だった丸山が神港学園高3年だった阿部を準々決勝で破った。阿部はこの敗戦により、大目標だった翌16年のリオ五輪出場を逃した。

 これまでの直接対決は7試合で丸山の4勝3敗。直近は昨年11月のグランドスラム・大阪大会の決勝で、阿部が丸山から支えつり込み足で技ありを奪い、撃破した。

 阿部は今年2月のグランドスラム・デュッセルドルフ大会でも優勝。4月の全日本選抜体重別選手権で両者が五輪代表の座をかけて決着をつけるはずだったが、コロナ禍で延期となっていた。

 今回はトーナメントではなく一発勝負のワンマッチ。戦績が拮抗しており、実力も伯仲とあって、まさに「勝てば天国、負ければ地獄」だ。前出の柳川氏が言う。

「丸山も阿部も、お互いを刺激するような発言をすることはありません。ただ、代表合宿などで顔を合わせても稽古を一緒にやることはない。先日の全日本合宿に阿部は参加しなかった。そこは手の内を明かしたくないことと、調整に集中したいという思いがあるからでしょう」

 そんな2人は階級は同じでも、柔道スタイルや育った環境は異なる。

 スター性、話題性では阿部に軍配が上がるだろう。柳川氏がこう言う。

「彼がその名を一躍全国に知らしめたのが、神港学園高2年時に出場した講道館杯。当時、現地で取材していましたが、ふてぶてしい表情で畳にあがり、豪快な担ぎ技で相手をバンバン畳に叩きつけていく。高校生が優勝するのは史上4人目。モノが違うというよりは、スター性しか感じなかったですね。『柔道部物語』(小林まこと著)というマンガがあります。柔道家のバイブルのようなもので、主人公の三五十五が背負い投げを武器にライバルたちをなぎ倒していく。阿部はまるでマンガの世界から飛び出てきたような柔道家でした。五輪のシンボルアスリートにも選ばれ、リオ五輪の閉会式ではJOCの東京五輪プロモーションビデオにも出演していた。柔道界だけでなく、JOCの期待も背負って、彼は成長を遂げてきた」

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