組織委はブッ壊れた?五輪への疑問に“スガ答弁”連発の醜悪

公開日: 更新日:

 菅首相は「安全・安心な大会」を繰り返し、五輪開催に猪突猛進。しかし、選手向け行動規則集「プレイブック」の出来は悪く、「安全・安心」を担保するには程遠い。大会組織委員会も無理に無理を重ねて機能不全に陥り、“スガ化”に拍車がかかる。こんな調子でパンデミック下の五輪を遂行できるわけがない。

 ◇  ◇  ◇

 初版を更新し、細かな感染対策などを示した「プレイブック第2版」は4月28日に公表されたが、世界から悪評ふんぷんだ。米医学誌は「科学的に厳格な評価に基づいていない」とし、五輪開催による感染拡大を警戒している。

■要の「毎日検査」と「バブル方式」はザル

 医療関係者が懸念するのは海外選手の「毎日検査」だ。プレイブックによると、最初は唾液抗原検査を実施し、不明確か陽性の場合にPCR検査を行うとしている。

 PCR検査と異なり、抗原検査はウイルス量が多くなければ、陽性を感知できない。選手はウイルス量が少ない無症状者である可能性が高く、抗原検査は不向きだ。この疑問点を具体的に組織委に尋ねてみると――。

〈プレイブックはコロナの状況が変化する中で知見を得ながら科学的に内容の更新を行ってきたもの。(略)コロナ禍においても世界中で安全に開催されてきた数多くのスポーツイベントの経験が盛り込まれている。また、プレイブックは、(略)オールパートナーズタスクフォースで重ねられてきた議論も踏まえて作成されている〉

 “原理原則”の抽象論を並べ立てるだけで質問と回答が全くかみ合わない。何かの間違いかと思い、かみ砕いて再質問すると〈前回お答えした通り〉とにべもない。

 さらに、関係者を隔離し、外部との接触を断ち切る「バブル方式」もうまくいかない可能性がある。

 全選手を一様に指定施設にカンヅメにするのではなく、滞在先の自己手配を認めているからだ。しかも、GPSでの行動履歴の確認も義務付けていない。いったい、どんな管理体制でバブルを維持するのか。改めて組織委に聞くと――。

〈プレイブックに記載している対策は、コロナの状況が変化する中で、知見を得ながら科学的に内容の更新を行ってきたもの。(略)世界中で安全に開催されてきた数多くのスポーツイベントの経験が盛り込まれた。(略)改訂にあたっては、感染症対策に万全を期すべく、WHOや感染症の専門家の意見を今まで以上に積極的に取り入れていく所存。(略)その他、施設関連、自己手配ホテルの詳細は非公開となります〉

 ちょっとクラクラしてくる。質問とは関係ないことをダラダラとしゃべり、肝心なことには答えない――まるでスガ答弁かと錯覚しそうな回答である。

強行に無理重ね、残業地獄が「スガ化」に拍車

 心配になってくるのは組織委の疲弊ぶりだ。メディアの質問にとんちんかんな回答しか返せないほど疲れ切っているのではないか。過去に日刊ゲンダイは組織委に何度も質問しているが、これほどヒドい答えだった記憶はない。

 ある大会関係者は「(組織委は)ここ半年くらいは、月の残業時間が150~200時間に上る職員もいるほどです」と日刊ゲンダイに証言する。過労死ラインを優に超え、土日出勤、深夜労働、早朝帰宅が常態化。五輪開催が近づくほどに「残業地獄」に拍車がかかっているという。

 五輪強行に無理を重ねる菅政権が、ムチャぶりを押し付けてくるたび組織委はクタクタ。五輪開幕まで50日を切り、主催者側の「スガ化」が進むほど、まともな大会とコロナ対策は遠のくばかりだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1
    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

  2. 2
    女子フィギュアスケート本田真凜が日刊ゲンダイにだけ激白していた“アンチ”への思い

    女子フィギュアスケート本田真凜が日刊ゲンダイにだけ激白していた“アンチ”への思い

  3. 3
    女子ラグビー原わか花の人生を変えた留学経験 体型を変えたフィッシュ&チップス

    女子ラグビー原わか花の人生を変えた留学経験 体型を変えたフィッシュ&チップス

  4. 4
    女子ラグビー原わか花 テレビ中継を目にして「コレだ!」 すぐさま強豪校に資料請求、競技人生の幕が開いた

    女子ラグビー原わか花 テレビ中継を目にして「コレだ!」 すぐさま強豪校に資料請求、競技人生の幕が開いた

  5. 5
    宇野昌磨の引退で「競技廃れてショー栄える」とフィギュア関係者が嘆き節…ファン離れ深刻懸念

    宇野昌磨の引退で「競技廃れてショー栄える」とフィギュア関係者が嘆き節…ファン離れ深刻懸念

  1. 6
    女子ラグビー原わか花「反対されるかも…」親戚一丸で祖父に隠した高校からのラグビー挑戦

    女子ラグビー原わか花「反対されるかも…」親戚一丸で祖父に隠した高校からのラグビー挑戦

  2. 7
    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

  3. 8
    女子ラグビー原わか花「五輪を目指すのは想像以上に過酷」…一度は折れた心を再起させた妹の涙

    女子ラグビー原わか花「五輪を目指すのは想像以上に過酷」…一度は折れた心を再起させた妹の涙

  4. 9
    錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている

    錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている

  5. 10
    女子ラグビー原わか花 チャレンジ精神の原点は少女時代のドブ遊び  「五輪は出場しただけで満足するつもりはない」

    女子ラグビー原わか花 チャレンジ精神の原点は少女時代のドブ遊び 「五輪は出場しただけで満足するつもりはない」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  3. 3
    17億円の損害賠償「払う気ない」と発言…「漫画村」運営者の言い分は通るのか

    17億円の損害賠償「払う気ない」と発言…「漫画村」運営者の言い分は通るのか

  4. 4
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  5. 5
    浜崎あゆみの足の形は日本人の中では少数派だった! 過去には池田エライザも話題に

    浜崎あゆみの足の形は日本人の中では少数派だった! 過去には池田エライザも話題に

  1. 6
    だれもが首をひねった 演技派俳優・古尾谷雅人の自殺の謎

    だれもが首をひねった 演技派俳優・古尾谷雅人の自殺の謎

  2. 7
    浜崎あゆみ FNS歌謡祭で「Who...」熱唱も…またもや“別人疑惑”、「まさにwho?」の声も

    浜崎あゆみ FNS歌謡祭で「Who...」熱唱も…またもや“別人疑惑”、「まさにwho?」の声も

  3. 8
    木村拓哉ドラマはなぜ、いつもウソっぽい? テレ朝「Believe」も“ありえねえ~”ばっかり

    木村拓哉ドラマはなぜ、いつもウソっぽい? テレ朝「Believe」も“ありえねえ~”ばっかり

  4. 9
    「小池都知事はエジプトのエージェント同然」カイロ大の体質を知り尽くすジャーナリストが看破

    「小池都知事はエジプトのエージェント同然」カイロ大の体質を知り尽くすジャーナリストが看破

  5. 10
    明石家さんまSPドラマ『心はロンリー』はフジの“忖度接待”作品? 辛辣感想に誤解も混じる

    明石家さんまSPドラマ『心はロンリー』はフジの“忖度接待”作品? 辛辣感想に誤解も混じる