元年俸120円Jリーガー安彦考真が格闘技2戦目 「魂で勝ちました!」の雄叫び上げMVPに

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 大みそかの総合格闘技「RIZIN」出場を目指し、格闘家に転身した元「年俸120円Jリーガー」の安彦考真(43)が8月27日、都内でデビュー後2戦目に挑んだ。

 対戦相手は格闘技歴7年の会社社長・小比田隆太氏(40)。「RIZINなんてそう簡単に出られるものじゃない」と挑発してきた宿敵に対し、安彦は1ラウンド(R)は劣勢を強いられたものの、持ち前のスタミナを最大限に生かして2R・KO勝ち。「魂で勝ちました!」と雄叫びを上げた。

 ◇  ◇  ◇

 4月のデビュー戦ではタイガーマスク姿の会社役員・佐々木司氏(38)に2R・KO勝ちを収め、幸先のいいスタートを切った安彦。だが、J2・水戸とJ3・YS横浜で計3シーズン、Jリーガーとして戦って現役引退した直後、大々的に「RIZIN出場」を掲げ、格闘家の道を本格的に歩み始めたことに対して、批判的な声も少なくなかったという。

「そんなに甘くない」「調子に乗るな」

 そんな厳しい意見もSNSに書き込まれ、今回の対戦相手の小比田にも苦言を呈されるなど、容赦ない逆風にさらされた。

「サッカーの魂」で戦おうと思った

 しかしながら「根っからの挑戦者」は、そういった批判に慣れている。

「40歳を目前にしてJリーガーを目指したときも『お前、バカじゃないか』と言われた。でも僕は自分の戦っている姿が<誰かの勇気になる>までやり続けたい」とキッパリ言い切り、自己研鑽に全神経を注いできた。

 デビュー戦からの4カ月間は、キックボクシングのスキルを磨くのはもちろんのこと、長年取り組んできたサッカーの練習を組み込みながらパワーアップを図ってきた。

「サッカーのフィジカルトレーニングを毎週必ず入れて、ダッシュ50本は毎回やりました。体幹を鍛えられるヘディング練習も有効だと思って取り組みました。キックボクシングにこだわるのではなく、『サッカーの魂』で戦おうと思ったんです」と彼は言う。

 ゴングが鳴ってからの安彦は、リング上を猛然と駆け回り続けた。

 勢い余ってスリップして倒れてしまうアクシデントもあり、1Rは小比田に打ち込まれるシーンもあり、ボディーもアザだらけになった。しかし「絶対に1ラウンドで倒れないと決めた」と本人も闘志奮い立たせて2Rに備えた。

最終2R終了間際にダウンを奪いKO

 勝負の最終2R。余裕の表情を浮かべていた相手の足が止まり始めると安彦は一気にラッシュをかける。「思考よりも肉体が先に動いた」とファイト後に振り返ってくれたが、的確で効果的なパンチを次々とヒットさせて終了間際にダウンを奪い、KOに追い込んで見事な勝利を飾った。

 俳優・木下ほうか、元光GENJIの大沢樹生らも参加した今回のイベント「EXECUTIVE FIGHT~武士道」でMVPの栄に浴することになった。

「動物としての本能を呼び覚ますために<刀を切る練習>をしたり、労働馬と触れ合って<リング上での距離感>を学んだり、いろんなトライをしたことが良かったと思います。キックボクシングの枠にとどまらないでやっていく。これが目標のRIZIN出場に繋がっていくと信じています」と彼は語気を強めた。

 リングで殴り合うことを強く反対していた母親も「挑戦者であり続けたい」という安彦の思いを理解し、映像越しに応援してくれたという。

「自分が肉体を鍛え上げて格闘家として挑戦すること、コロナ禍で落ち込んだ世の中に希望を与えること、このふたつの思いは、必ずしも一致しないように映るかもしれない。でも僕は巡り巡って一緒だと思っている。別々に見えていて実は螺旋階段のような軌跡で上昇していき、いつしかふたつの思いが交わると信じて、これからも目標に向かいたい。本気で日本を元気にしたいんです」

 こう目を輝かせる43歳のチャレンジは、まだまだ道半ば。次なる関門はプロのリングに上がるチャンスをつかむことだ。

 RIZINまであと4カ月。安彦流のアプローチで大舞台に立つ権利を獲得すべく、これからも貪欲に突き進んでいく。

▽元川悦子(もとかわえつこ)1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U-22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

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