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西潟正人東京海洋大 非常勤講師

魚の伝道師。1953年、新潟生まれ。魚好きが高じて全国の海岸線を巡り、神奈川県逗子市で地魚料理店を20年間営む。2017年から東京海洋大で魚食文化論の非常勤講師を務める。

ツチクジラの解体に感動!「外房捕鯨直営くじら家」がある千葉県和田町は400年の歴史を引き継ぐ捕鯨基地

公開日: 更新日:

 海は食材の宝庫で、日本の食卓はクジラからシラスまで大小さまざまな海で暮らす生き物に支えられている。東京海洋大で魚食文化論を講義する非常勤講師・西潟正人氏は日本の海岸線を巡り、海の幸を食べ歩いてきた。その人気講師が、クジラの街として知られる千葉県・和田町のほか、地魚や珍しい魚を扱う活気あふれるファンキーな魚屋2軒を訪ねた。

 東京湾に捕鯨基地があったことを知る人は、地元でも少ない。歴史を振り返ると、房総半島南部の勝山漁港と館山漁港で江戸時代から1969年まで続いた。現在は48年に創業した和田町の外房捕鯨が、400年に及ぶ歴史を引き継いでいる。

 クジラ類は世界に83種類いて、そのうち17種類は国際海洋資源保護の目的で捕鯨禁止になっている。

 日本の食文化に根づくミンククジラやニタリクジラ、イワシクジラも規制の対象で、日本は2019年6月に国際捕鯨取締条約から脱退。外房捕鯨が主に捕獲するのは、規制対象外のツチクジラだ。クジラの中では小型でも体長10メートルなら重さは10トンを超える。

「鋸南町の沖合には水深500メートルを超える海底谷が相模湾から続いているのです。クジラはその道を通って、大昔からやってきたのでしょう」

 外房捕鯨の2代目である庄司義則社長は、ツチクジラ大好き人間だ。漁期は毎年6月末から8月末まで、和田浦のクジラ解体処理場では年間枠26頭を扱って採算を確保させるも、今年は3頭しか捕れていない。クジラは予告なしに捕獲される。解体作業員は常駐させねばならず、燃油のほかにも人件費が常に加算されるから大変だ。

■「2頭を同じ解体場で見るのは初めてです」

 庄司社長にとって胃の痛い日が続く中、8月9日、クジラ解体の連絡が入った。前日に2頭のツチクジラが捕獲されたのだ。10.5メートルのオスと10.2メートルのメス。「2頭のクジラを同じ解体場で見るのは初めてなんです」と緊張しつつも、どちらも良好な肉質であることを自分の目で確認し、うれしそうだった。

 しかし、解体した9日に早くも漁期終了を宣言した。年々漁獲頭数が減少しているため、経費節減から苦しい決断を余儀なくされたのだ。

 外房捕鯨のホームページでは、捕獲状況や解体日の時間などを知らせている。解体は夜明け前の早朝から始まることが多いので、遠方のクジラ好きがHPをチェックしてから出かけるのは難しいと思うが、タイミングが合って可能なら見ていて損はないと思う。見物人は意外と多く、小学生たちも引率されてやってくる。

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