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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

値上げラッシュの時代になんと値下げ敢行! BYDの「コスパ逆張り戦略」がハンパない

公開日: 更新日:

新型EVシーライオン7(車両価格:¥4,950,000/税込み~)

 先日も韓国ヒョンデ・インスターの驚異的コスパEV戦略を報告したばかりだが、今度は中国BYDがやってくれた。それはこの値上げ時代の敢えて行うトンデモ値下げ&クオリティーアップ攻撃だ。

 まず4月半ばに上陸した新型EVであり、ミディアムEV&SUVのシーライオン7が凄くて、なんと事実上の値下げ。具体的には、82.56kWhの大容量リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載しつつ2WD車が495万円スタートで、4WD車が572万円スタート。単純に同クラスのテスラモデルYが500万円半ばスタートでしかも先進安全がオプションであることを考えると、100万円以上は安い!

 それだけじゃない。新型シーライオン7のベースは去年上陸のミディアムEVセダン「シール」なのだが、ボディ骨格はもちろん、82.56kWhの大容量バッテリーまで全く同じで、アチラは528万円スタート。つまりボディを大型SUV化してるのにも関わらず、価格は逆に30万円も下がっているのだ。信じられないハナシである。

 さらに今回、シーライオン7の試乗も敢行したが、ボディ外板が専用デザインなのはもちろん、全長×全幅×全高は4830×1925×1620mmとシールより30mm長く、50mmm広く、160mmも高くなっててカッコいい。フルLEDの前後ライトにしろデザインが絶妙にアジャストしてあるのはもちろん、シーライオン7のみコーナリングライト付きで性能アップ。価格が安いとは思えないデキなのだ。

動力性能、デジタル性能ともに大きく進化

 動力性能も例えばフロント160kW、リア230kWの前後4WDモーターは基本シールと共通だが、380Nmのリア最大トルクはシールの20Nm増しだし、0-100km/h加速にしろ4WDモデルは4.5秒と激速。普通なら絶対に価格を上げちゃうレベルで商品力がアップしているのだ。

 モード航続距離にしろ、SUV化で少し落ちたとはいえ2WDで590km、4WDで540Kmと絶対的に過不足なし。安心して長距離ドライブに出かけられるミディアムEVだ。

 さらなる驚きはインテリアで、シール同等に全面上質なナッパレザーで覆われたシートは快適だし、前席左右は電動で、リア席も20度の電動リクライニング付きで4座式のシートヒーターまで付く。

 気になるデジタル性能も、スマホ大国たる中国メーカーだけあって、そもそもシールからして縦横に回る15.6インチのセンターディスプレイを装備してるが、こちらも進化。チップがスマホ用からスナップドラゴン8.55に変わり、画面はやたらキレイかつ詳細になったわ、操作に対してサクサク動くわ、これだけでもパソコン一世代分は進化した。

唯一気になるのはやはり乗り心地やハンドリングだが…

 車内も自慢のバッテリーケースまで補強に使うセル・トゥ・ボディや8イン1アッセンブリー構造のおかげでスペース効率良好。SUV化でただでさえ広かったリアシートは、身長175cmの小沢が余裕で足が組めるほど広くなり、ラゲッジスペースもリアだけで500ℓ、フロントに58ℓと広くて便利。まさに文句付けようもないレベルでよくできたEVなのだ。

 唯一気になるのはやはり乗り心地やハンドリングの面で、若干欧州のプレミアムSUVなどに比べると荒さやフィールの物足りなさ、先進安全のぎこちなさはあり、そこに数十年というクルマ作りの年月の差を感じるが、ぶっちゃけ価格を考えるとBYDが世界で伸びてるのは納得。特にコスパはヤバい。

 実際、昨年2024年はEVやPHEVの販売で世界一となり、自動車全体の販売数でも427万台とホンダや日産を抜いただけある。実にいろんなところでよくできているのだ。

 エアコンにいち早く効率的なヒートポンプ式を使ったり、車載ソフトウェアの無料更新システムの導入も早かったりと、さすがはBYD。実は他の車種も軒並み30万円レベルの値下げを敢行しており、果たして今後、この保守的な日本自動車マーケットをどう崩していくかは見ものなのだ。

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