海洋冒険大作を上梓 笹本稜平氏に聞く

公開日: 更新日:

 エベレストやヒマラヤを舞台とした、スケールの大きな山岳小説を多数手がけてきた著者。一方、海洋冒険小説は、大藪春彦賞を受賞した「太平洋の薔薇」以降、書く機会に恵まれなかったという。そして今回、10年ぶりに“海を舞台に”との依頼を受けて書き上げた最新作「遺産 The Legacy」(小学館 1900円)は、400年前に太平洋のど真ん中に沈んだスペイン船の引き揚げを巡り、水中考古学者とトレジャーハンターがしのぎを削るという、迫力の長編小説だ。

「海運関係のライターをしていた経験がある私は、小説家の中で一番、船の知識を持っているんじゃないかと思うんです。クルーザーについて知っていても、私のように貨物船に詳しい人間はあまりいないはずです。日常生活には役に立ちませんが(笑い)。でも今回、太平洋に沈んだガレオン船(帆船の一種)を巡る攻防を描いたことで、かつての知識を生かすことができました」

 主人公の興田真佐人は、大学で水中考古学を学んだものの、今は豪華客船でスキューバダイビングのインストラクターをしている。真佐人には、追い続けている夢があった。江戸時代初期、日本と東アジアを結ぶ朱印船に乗り込んで海を渡った、航海士の先祖を探すこと。興田正五郎という名のその人は、フィリピンでスペイン総督府に気に入られ、マニラ―アカプルコを航行中に、海の藻屑と消えたという。そして、彼が乗っていたガレオン船アレグリア号には、推定10億ドル以上の財宝が積まれていたというのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  2. 2
    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

  3. 3
    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

  4. 4
    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  2. 7
    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

  3. 8
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  4. 9
    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

  5. 10
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間