「女系の総督」藤田宜永氏

公開日: 更新日:

「反論はしない。意見は控えめに。意見を述べたらしばらく黙る――。崇徳がやっているこれらは、女性に囲まれて生きる男の処世術です(笑い)。一昔前は、雷親父が成り立ちましたが、誰にも加担せず、優柔不断に見えても柔らかく受け止めていくのが現代の父親の役目。崇徳は一見ヘラヘラしてるけど、しっかり手綱を握っていて家族の要になっているんです」

 母の認知症発症を機に森川家には次々と問題が持ち上がる。崇徳は家に寄り付かない長女と和解しようと奔走し、やがて森川家の隠された秘密が明らかになっていく。

「若い頃は女性の言動に腹を立てたこともあったけど、僕も60歳になってようやく崇徳の心境になれました(笑い)。物語の設定は家庭ですが、職場でも何かの集まりでも、女性がひとりでもいればそこは女系なんです。だから崇徳の気持ちがわかる男性読者は多いんじゃないかな」

 周囲の人々に向ける崇徳の温かいまなざしが印象的なユーモラスでアットホームな物語。著者の集大成だ。
(講談社 1750円)

▽ふじた・よしなが 1950年、福井市生まれ。86年「野望のラビリンス」で小説家デビュー。01年「愛の領分」で第125回直木賞受賞。著書に「和解せず」「銀座千と一の物語」など多数。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

  3. 3
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  4. 4
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  5. 5
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

  1. 6
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  2. 7
    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

  3. 8
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  4. 9
    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異