一冊で数倍楽しい短編アンソロジー文庫特集

公開日: 更新日:

「肉体の鎮魂歌(レクイエム)」増田俊也編

 スポーツノンフィクションの分野で、歴代もっともクオリティーの高い作品は何かという視点から時代を経てもなお共感を呼ぶことができる不動の作品を、大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞した作家が選出。

 肉体というはかない道具を駆使して人生の中の短い期間を疾走するスポーツというジャンルならではの、夢のような一瞬の華やかさと、そこからいつかはふるい落とされていく人間としての切なさが凝縮された作品群は圧倒的な力を持つ。

 球界のスター・長嶋茂雄の陰で歴史に埋もれた2人の三塁手を描いた沢木耕太郎の「三人の三塁手」、1979年日本シリーズ第7戦での江夏の投球を追った山際淳司の「江夏の21球」、実直なボクシングでマイク・タイソンと戦い抜いたボクサーを描いた佐瀬稔の「アリを越えた男 イベンダー・ホリフィールド」など全10編。歴史の目撃者となったかつての若者の心にも、活字で追体験する今の若者の心にも共に火をつけてくれる熱きノンフィクション集だ。(新潮文庫 630円+税)



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

  2. 2
    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    巨人・菅野智之の忸怩たる思いは晴れぬまま…復活した先にある「2年後の野望」 

    巨人・菅野智之の忸怩たる思いは晴れぬまま…復活した先にある「2年後の野望」 

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  2. 7
    「つばさの党」ガサ入れでフル装備出動も…弱々しく見えた機動隊員の実情

    「つばさの党」ガサ入れでフル装備出動も…弱々しく見えた機動隊員の実情

  3. 8
    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

  4. 9
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  5. 10
    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?