現代は“オトコ”にとって本当に生きづらい時代なのか?

公開日: 更新日:

「男という名の絶望」奥田祥子著

 新聞社系週刊誌記者として家庭問題や男性の晩婚・非婚化などを取材してきた著者。「男はつらいらしい」というルポもあるが、本書の筆致はかなり違う。

 リストラの恐怖におびえる中間管理職世代。妻の浮気を見て見ぬふりし、妻のDVに苦しむ夫。子どもとの関わりで家族関係まで壊れた父。中年過ぎても母親の影につきまとわれる息子。現代の男たちを取り巻く複雑な重圧の諸相がこれでもかとばかりに描かれる。

 新聞記者のルポは客観的記述がスタンダードだが、本書では筆者の個人的な思いや姿勢が折々に吐露され、取材相手の夫婦から子どものいない独身女性という立場を「いいですね、気楽で」と皮肉られたりもする。しかしそれがかえって取材対象の悩みや苦しみに深く踏み込むきっかけになるような新しいルポの試みにもなっている。

 保身のために同期の友人を身代わりにして生き残ったサラリーマンが家庭にいる場を失い、末期がんでようやく妻とのつながりを取り戻す――。書名だけ見るとジェンダー論の学者の小言のようだが、本書はむしろ取材対象への悲しい共感をこめたジャーナリストの現代男性論だ。(幻冬舎 800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  5. 5
    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

  1. 6
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  2. 7
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  3. 8
    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

  4. 9
    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

  5. 10
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽