深夜アニメは面白い!

公開日: 更新日:

 ジブリ作品ならいざ知らず、秋葉原のオタク文化に支持されている深夜アニメは、どこが面白いのか、さっぱり分からない。そんな人にぜひ手に取ってほしいのが、町口哲生著「教養としての10年代アニメ」(ポプラ社 900円+税)だ。

 本書は、近畿大学の「映像・芸術論1」で行われた講義を書籍化したもの。講義では、日本のアニメにはあまりにも多くの情報が付加されている点から、もはや単なる娯楽ではなく「インフォテインメント=情報娯楽」であると定義。その情報部分に対し、教養(学問)による分析を試みている。

 例えば、“中二病”を真正面から描いた新感覚ラブコメとして人気を博した「中二病でも恋がしたい!」を例に挙げてみよう。高校1年の主人公勇太は、中学時代に「ダークフレイムマスター(闇の炎の使い手)」を名乗るという中二病だった。進学校入学を契機に痛い過去を封印しようとするのだが、現在進行形の中二病であるクラスメートの女子生徒に巻き込まれながら、物語が展開していく。

 このアニメで論ずるべきは中二病だ。ちなみに中二病とは伊集院光のラジオ番組に由来し、「思春期にありがちな世間一般の常識からずれた自意識過剰な言動」を指す。中二病は一般的に「邪気眼系」「DQN系」「サブカル系」に分類され、主人公の勇太及びオタクが関わるのが、“自分には不思議な力がある”と考える「邪気眼系」だ。そして、その背景にあるのが、フロイトが分析したナルシシズム(自己愛)的な妄想であるという。

 ナルシシズムは、現在の自分、過去の自分、なりたい自分、自身の一部のいずれかが対象とされる。このとき、なりたい自分を模範として自己の像を獲得し、これに過剰にとらわれることで発症するのが、オタク特有の中二病。

 多くのオタクは妄想をエネルギー源とするため中二病は宿命であり、社会人になっても治らない可能性もあるわけだ。

 他にも、「意識高い系」や「アスペルガー」「超監視社会」などの切り口でアニメを読み解いていく。深夜アニメ、意外と奥が深い。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  1. 6
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

  2. 7
    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

  3. 8
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9
    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10
    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる

    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる