夢の統合は消し飛びいまや解体の危機「岐路に立つEU」

公開日: 更新日:

「欧州 絶望の現場を歩く」木村正人著

 10年前、産経新聞の支局長としてロンドンに赴任した著者。そのころEUの未来はバラ色と喧伝されていた。労働者層との経済格差に注目した著者は、グローバル化とデジタル化の福音を説く著名な英国の社会学者に、英国の現状は「日本の『失われた20年』の初期段階ではないのか」と迫った。だが、「それは日本だけの話」とはねつけられたという。欧州のエリート層は貧困に沈む低賃金層に無頓着で自動化と無人化の一本やりで未来を描いた。

 しかし著者は、「働きたくても仕事がない」とつぶやくギリシャ人労働者は「筆者が育った大阪市西成区・あいりん地区の日雇い労働者より無気力な表情」だったという。移民の流入に伴う雇用不安に加え、テロの脅威が無用の混乱までをも引き起こし、犯罪組織や武器・麻薬・放射性物質の闇市場までが拡大している。

 庶民の目線を重視する著者は、いま一介のフリージャーナリストとして、単なる経済問題に限らない政治・社会を巻き込んだ欧州の厳しい現実に目を向けている。(ウェッジ 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  5. 5
    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

  1. 6
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  2. 7
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  3. 8
    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

  4. 9
    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

  5. 10
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽