坂爪真吾
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坂爪真吾

「新しい性の公共」を目指し、重度身体障害者への射精介助サービスや各種討論会を開く一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。著書に「男子の貞操」(ちくま新書)、「はじめての不倫学」(光文社新書)など。

女性の一生は「計画が立てられない」

公開日: 更新日:

「『女性活躍』に翻弄される人びと」奥田祥子著 光文社/820円+税

 女性には、生き方の選択肢がいくつも用意されている。結婚するか・しないか、子どもを産むか・産まないか、子育てや介護をしながら仕事を続けるか・辞めるか……など。

 そうした2択の中に、個人の能力や環境、景気や運などの自分の意志だけではどうしようもない要因が絡んでくる。結果として、「する・しない」といった2択だけでなく、「できる・できない」「せざるをえない」といった選択肢も増えるため、選ぶことのできるルートはますます複雑になる。そして一見すると、それらの選択肢が「自分の意志で選べるように思えること」「自分の意志で選んだかのように思わされること」も厄介だ。

 結婚、出産、育児、介護といったライフイベントを経験することによって、働き方や仕事に対する意識は目まぐるしく変わる。そして不安をあおり立てる人はいくらでもいるが、答えを教えてくれる人はどこにもいない。

 本書の中で最も印象に残ったのは、「女の人生は計画が立てられない」という言葉だ。

 女性の人生は予測不可能性に満ちたものである。それゆえに旧態依然とした「あるべき女性像」、もしくは行政主導の「仕事と家庭を両立して活躍する女性」といった一面的なレッテルに基づいて自らの人生を評価されることは、耐えがたい苦痛になる。

 さらに厄介なのは、近年はそうしたレッテル自体が流動化しているということだ。社会が女性個人に対して「女性はこうあるべき」という規範を押し付ける風潮は昔も今も変わっていないが、「こうあるべき」の中身自体が、短いスパンで目まぐるしく移り変わるようになっている。

 そうした時代の中では、社会や周囲の状況がどうであれ、それらに「翻弄される」のではなく「味わう」という姿勢を貫くことが大切になるはずだ。性別を問わず、私たちがこの「女性活躍推進社会」を「味わう」ためのヒントが、本書の随所にちりばめられている。

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