「天命」岩井三四二著
安芸国の毛利家の次男、元就は、分家して猿掛城主、多治比元就となった。父・弘元の側室で、幼いころ、両親を失った元就を母親代わりに育ててくれた大方さまの尽力で、嫁取りの話もまとまった。だが、元就としてはそれどころではない。弱小国の領主として苦しんだ父は39歳で、兄は24歳で酒に溺れて死んだ。兄の子はまだ3歳で、21歳の元就が後見人として毛利家を動かしていかねばならない。そんな中、武田勢が攻めてくるとの報が入る。重圧にあえぐ元就に大方さまは「雪隠へ行きなされ」と言った。父は雪隠で、我は大江広元の子孫、我は大将と叫んで、平然とした顔で出てきて出陣したと。
極悪非道と恐れられた戦国武将を描く歴史小説。
(光文社 1900円+税)