「血の郷愁」 ダリオ・コッレンティ著 安野亜矢子訳
イタリア・ミステリーである。残忍な手口の殺人が発生し、それを追いかける新聞記者たちの物語だ。ふくらはぎを噛みちぎり、内臓を抜き、死体のそばに針を置く、その残忍な手口は、イタリア犯罪史に名を残す19世紀の連続殺人犯の手口そっくり。いったい犯人は何者なのか、というわけでミステリーの幕が開く。
主人公は2人、まず定年間近のマルコ・ベザーナ。社会部のベテラン記者だ。仕事一筋で規律を乱すので社内には敵も多い。この手のタイプにはよくあるが、家庭を顧みないので妻子には逃げられて1人暮らし。ただし、この男、モテモテで、しかも断ることを知らないから私生活はめちゃめちゃだ。
対するは、イラリア・ピアッティ。こちらは社会部に配属されたインターンで(編集局で雇われることなんてないんだって誰か言ってやれよ、と囁かれている)、変わり者。おそろしくセンスの悪い丸眼鏡と服装で、しかも足元は漁師用のゴム長靴。それで平然としているから、すごい。しかしこのヒロイン、知識もあって観察力も鋭く、つまりおそろしく仕事ができる。
この2人がコンビを組んで犯人を追いかける新聞記者小説だが、あっという間に読み終えるのは、知識豊富なイラリアが随所で披露する「歴史講座」が楽しいからでもある。もしも日本でテレビドラマ化するなら、主演は吉田鋼太郎と高畑充希だ!
(ハーパーコリンズ・ジャパン 1194円+税)