「経済学はどのように世界を歪めたのか 経済ポピュリズムの時代」森田長太郎著
アダム・スミスの「国富論」刊行を起源として経済学が始まり、以来約240年の間に新しい学説が次々と生み出されてきた。しかし大学で経済学を学んだ著者は、この学問に対して何か論理を歪曲しているという直感的な不信感を持っていたという。そのもやもやとした感じは、卒業後、大手証券会社で金融の現場に入ってからも拭えなかった。
本書は経済学のこれまでの歩みを振り返りながら、社会と経済学及び経済政策の関係を見直し、現在の経済学が陥っている問題を明らかにしようというものである。
アダム・スミスの次に経済学に大きな画期をなしたケインズのマクロ経済学は紆余曲折を経て1980年代に大きな限界に突き当たるが、新たな活動の場を求めて金融政策に深く関わっていく。そこで唱えられた「金融万能政策」が折からの「経済ポピュリズム」の流れに乗って肥大化していく――。著者はこうしたプロセスをたどりながら、安易にポピュリズムに流され、リーマン・ショックのような金融危機を招いた経済学と経済学者の「不作為の罪」を批判する。
机上の論ではなく、現場から発せられた意見だけに傾聴に値する。
(ダイヤモンド社 2000円+税)