「LOH症候群」堀江重郎氏

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「最近、グラビア写真に興味がなくなった、または以前のようにハツラツとして働けなくなった、笑うことが減ったと感じているなら要注意です。もしかすると、男性更年期障害かもしれません」

 日本初のメンズヘルス外来を開設して21年の著者はこう警鐘を鳴らす。

 更年期障害といえば女性特有の症状だと思われがちだが、実は男性にもあり、しかも最近増えているという。

「男性ホルモンのテストステロンは、外に出かけて“獲物”を取ってくる活動をつかさどるホルモンです。テストステロンが高い人はハツラツとしていて、意欲があり、病気になりにくい。高齢でも活力があります。つまり、男性にとっての元気印の源なんですね。このテストステロンが急激に減少すると、やる気や興味の喪失、うつ、性欲・性機能の低下などを起こします。これが近年増えている男性更年期障害、医学的には『LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)』と呼ばれる病気です。女性の更年期は誰でもがなりますが、男性の場合、罹患する人としない人に分かれます。30代以降なら誰にでも起きる可能性があり、日本の成人男性では数百万人がかかっているといわれています」

 本書は、LOH症候群になる原因を解説し、症状の診断や対処法、最新の治療法、専門医の紹介などを具体的に挙げた、専門医によるLOH症候群の対策本である。

 テストステロンが減少する原因で最も多いのはストレスだ。人間関係、過労、社会からの隔離など社会的要因が引き金になる。

「現代の男性にとっての“獲物”とは会社や同僚、飲みニケーションで得るものであり、どこかでお互い認め合って承認されてきました。それがコロナ禍でテレワークになったことで、テストステロンは低くなる傾向に。減った状態で社会活動をすることは大変な苦痛を伴うんですね。テストステロンの低下で、うつ状態になることがあります。でもうつ病ではないので抗うつ薬では治らない。ある男性が、知人の連帯保証人になってしまい、せっかく建てた家を失ってしまいました。うつになり、精神科で抗うつ薬を処方してもらいましたがいっこうに良くならない。その後、私の外来に来たため、話を聞いてテストステロンの補充療法に切り替えたところ、効果はてきめんでした」

 男性はやる気が出てきてタクシードライバーの職に就き、また頑張れるようになったという。彼はうつ病ではなく、テストステロンが低下していたに過ぎなかったのだ。

■薬指が長い人は男性ホルモン値が高い!?

 やる気が出ない、なんとなく元気が出ないと気にはなっても忙しくて病院を訪れる時間はない、という人も多いだろう。そんなときは、自分のテストステロンの値を知ることができる検査の活用を著者はすすめる。値から自分の元気の度合い、不調がわかり、対策を立てることができる。

「唾液を採取して、郵送するだけの手軽な検査です。測定値は同年齢層の平均値より高いか低いかの4段階で報告され、値がかなり低ければ男性更年期外来で受診すればいいし、高い人はさらにテストステロン値を高めるためにエクササイズや食事、サプリメントを活用すればいい」

 ちなみに、人さし指と薬指の長さを比べたときに、薬指のほうが長い男性はテストステロンが高い傾向がある。嘘のような話だが、実際に医学的に検証されているという。本書には他にも顔の輪郭から値の高低を知る方法、サプリや漢方など、興味深いデータと合わせて紹介している。

「テストステロン値の低下は生活習慣病のリスクも高まります。値が上がれば前向きに行動できるようになり、幸福感にもつながっていく。気になっているようなら、検査をしてみてください」

(KADOKAWA 990円)

▽ほりえ・しげお 1960年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科教授。医学博士。85年東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。帝京大学医学部主任教授を経て現職。日本初のメンズヘルス外来を開設。日本メンズヘルス医学会理事長。

【連載】著者インタビュー

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