「バスケットボールの福音」岸田智明著
バスケットボール小説である。主役は小学5年生の女子。陽菜と沙耶の双子姉妹が、バスケットのチームを作ろうと言いだすのが発端だ。特にバスケットが好きだったわけではない。日曜の朝からごろごろテレビを見ているだけの姉妹に、何かスポーツでもしろと父親が怒ったらしい。スイミング教室やテニスクラブは隣町までの送迎が必要だから、少し無理。最終的にバスケットが選ばれたのは、バスケおたくの春香を引きずり込めば、スポーツ万能の輪が漏れなく付いてくるからだ。
春香と輪は家族ぐるみの付き合いで、とにかく仲がいい。付き合いのいい沙保里を合わせれば5人が揃う。これがバレーボールなら6人が必要になるから、断然バスケ。
というわけで、佐井川フレンズが結成されるが、問題はバスケおたくの春香が観戦専門で、自身はスポーツ音痴であることだ。無謀きわまりないが、もっと無謀なのは、指導されることもなく、さして練習することもなく、ということはルールも知らずに大会に出てしまうこと。このあたりはとてもユーモラスに描かれる。5つ目のファウルをもらうとその選手は退場になるとは知らずにいたら、2人が退場になり、なんと3人で戦うはめになるのだ。ここから1年、今度はコーチの指導を受けてリベンジするのである。
随所にまだ甘さが残っていて、さらに余分な要素もあるので大傑作とは言いがたいが、楽しいスポーツ小説だ。
(パレード 1430円)