「K2 池袋署刑事課 神崎・黒木」横関大著

公開日: 更新日:

「K2 池袋署刑事課 神崎・黒木」横関大著

 石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」などのイメージがあって、池袋というと犯罪が多いようなイメージもあるが、東京23区の犯罪件数(2022年)でいうと、1位新宿区、2位世田谷区、3位足立区……ときて、池袋のある豊島区は7位。これは区全体の数字だが、池袋警察署は、渋谷、新宿と並んで大規模な警察署で署員の数も多く、犯罪件数も多い。本書はその池袋署を舞台にしたバディー刑事小説だ。

【あらすじ】神崎巡査長は、半年前に定期人事異動で池袋署刑事課強行犯係に配属された。そこには警察学校の同期で、池袋署ですでに3年のキャリアを積んでいる黒木がいた。理詰めで捜査を行う優等生タイプの神崎に対して、黒木は本能的な勘を優先させるスタンドプレー気味な捜査方法と、キャラクターは正反対。神崎が驚いたのは、破天荒な黒木に対してベテラン刑事たちがみな一目置いていることだった。

 黒木が出前でも取ろうかといったところに電話が入る。神崎が取ると、飼っている猿が逃げたというもの。けげんに思いつつも話だけでも聞こうと出かけようとすると、黒木も面白がって同行するという。

 相手はホストクラブのオーナーで、番犬代わりに飼っていた猿が逃げたという。1週間後、そのオーナーが殺される。猿の逃亡と関係があると思った神崎・黒木は捜査に当たるが、なんと黒木はホストクラブに潜入するという掟破りを……。

【読みどころ】話が進むにつれ、2人の警察学校時代へと遡りながら、黒木がなぜ警官になったのかが徐々に語られていくのだが、そこには神崎との思わぬ接点があることが明かされる。各話、黒木の独特の小気味のいい推理力が発揮される、ユニークな味わいのバディー刑事もの。 〈石〉

(講談社 748円)

【連載】文庫で読む 警察小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「実際のところ二刀流を勧める立場でもなければ、考えたことも、その発想すらなかった」

    「実際のところ二刀流を勧める立場でもなければ、考えたことも、その発想すらなかった」

  2. 2
    入団直後から“普通でなかった”思考回路…完封を褒めても「何かありましたか?」の表情だった

    入団直後から“普通でなかった”思考回路…完封を褒めても「何かありましたか?」の表情だった

  3. 3
    “懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

    “懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

  4. 4
    「結婚はまったく予想していませんでした。野球をやっている間はしないと思っていた」

    「結婚はまったく予想していませんでした。野球をやっている間はしないと思っていた」

  5. 5
    「銀河英雄伝説」大ヒットの田中芳樹さんは71歳 執筆47年で120~130冊…どのくらい稼いだの?

    「銀河英雄伝説」大ヒットの田中芳樹さんは71歳 執筆47年で120~130冊…どのくらい稼いだの?

  1. 6
    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議

    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議

  2. 7
    GLAYのTERU“ホテル不満ツイート”が物議…ツアー最終日「気持ちが上がらない」にファン失望

    GLAYのTERU“ホテル不満ツイート”が物議…ツアー最終日「気持ちが上がらない」にファン失望

  3. 8
    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

  4. 9
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10
    小池百合子都知事の“元側近”小島敏郎氏が激白! 2020年都知事選直前に告げられた「衝撃の言葉」

    小池百合子都知事の“元側近”小島敏郎氏が激白! 2020年都知事選直前に告げられた「衝撃の言葉」