井筒和幸
著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

「スター・ウォーズ」に劣らぬ“理力”を弄ぶ支配者ばかり

公開日: 更新日:

 映画は実写なり――と我らがいくら思ってようと、この国の映画の風潮はすっかり変わり果ててしまった。悲しくてやりきれない。

 前年の映画興収はアニメのおかげで増大したと興行界だけは喜んでいる。「天気の子」は140億円。延べ1000万人以上が見た勘定だ。「アナ雪2」「アラジン」と上位はアニメだらけ。続く実写映画もガキ向けが多く、大人が見られるシロモノではなさそうだった。中国人のファンまで「天気」の場面の聖地巡りに来ているとか。なんちゅーこっちゃだ。天空の気まぐれを読めない天気予報士も面目丸つぶれだ。

「気」を送って、相手の意思を思いどおり操作したり、物を引力に逆らって動かせたり、他者に何かを強いる力を、映画「スター・ウォーズ」では「フォース」と呼んで、ファンたちを熱狂させてきた。1977年、当時25歳だった小生もその旋風にあおられて見たものだ。帝国軍兵士らの光線銃の撃ち合い場面には、ついにアメリカ映画も終焉したかと感じた。ぎょろ目の主人公、ルーク・スカイウォーカーという青年が放つ、何でも自分の思いどおりに動かす気の力、念力を「フォース」と呼んで、字幕じゃわざわざ「理力」と辞書にもない語句を当て、初代ぎょろ目が引田天功も真っ青な立派な念力使いとなり、銀河系の自由と正義を守るんだと「ジェダイの騎士」の修行を積む場面にも呆れ返った。ちょうど、怪しさ満点のユリ・ゲラーのスプーン曲げ奇術や壊れた時計直しの超能力ブームが世界中で起きていた頃で、念力映画ブームに大勢がとりつかれ、これから泳いでいく映画界の前途に思わず、ため息が出たものだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

  2. 2
    スッカラカンになって帰国のはずが…ラスベガスのカジノで勝った

    スッカラカンになって帰国のはずが…ラスベガスのカジノで勝った会員限定記事

  3. 3
    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

  4. 4
    なぜ15大会のスポンサー企業は日本女子プロゴルフ協会に“抗議文”を送ったのか

    なぜ15大会のスポンサー企業は日本女子プロゴルフ協会に“抗議文”を送ったのか

  5. 5
    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    石原裕次郎(12)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉

    石原裕次郎(12)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉会員限定記事

  3. 8
    ミス・インターナショナル 特派員協会で「涙の訴え」のワケ

    ミス・インターナショナル 特派員協会で「涙の訴え」のワケ

  4. 9
    (26)第3作「男はつらいよ フーテンの寅」では寅さんを地面に叩きつけた

    (26)第3作「男はつらいよ フーテンの寅」では寅さんを地面に叩きつけた会員限定記事

  5. 10
    元衆院議員・若狭勝氏は女帝と断絶して7年「今は本当に幸せ」

    元衆院議員・若狭勝氏は女帝と断絶して7年「今は本当に幸せ」