井筒和幸
著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

アフガン選手らはパラ出場を断念…“自由”というのがいかに大事か今、誰もが思い知っただろう

公開日: 更新日:

 タリバンに支配されたアフガニスタンの選手らはパラリンピック出場を断念し、開会式じゃ国連関係者ら2人だけが国旗を持って行進した。しかし、NHKの中継放送の司会者はそんな事態をちゃんと伝えなかった。入場は断念したが、選手2人が祖国から脱出してオーストラリアに入国できたと、どうしてそれだけでも解説フォローしてあげられなかったのか? これこそが世界の現実だろうが。心のない放送だった。

 自由を奪われて1年半以上も経つ。どこにでも出歩いていた日々が懐かしい。“自由”というのがいかに大事か、今、誰もが思い知っただろう。フリーダムでもリバティーでもいい。あえて言うなら、FREEDOMか。誰にも止められない、言いたいことを言い、やりたいことをやる自発的な権利やパワーのことで、もちろん権力からの自由ということだ。規制や束縛や負担や義務や犠牲や心配や何からもオレはFREEなんや! というオックスフォードの辞書みたいなことを授業のように教えられたのは、気ままなバイク野郎の映画「イージー・ライダー」だった。映画館に日課のように行っていたころだ。

 1968年から70年にかけて、人生で最も多感な高校生の我らはアメリカ映画にかぶれっ放しだった。見るもの何でも勉強で、何でも面白くてシブくてカッコイイ生きざまの主人公ばかりだった。日本の邦画はさして見るものがなかった。森繁久弥主演の「社長シリーズ」では何でもテキトーで気が弱く、大株主にへつらう雇われサラリーマン社長が主人公で、戦争体験の話一つもしない人間らしくないそんな大人がいる会社なんかに誰が勤めるかとバカにしていたもんだ。加山雄三の「若大将シリーズ」もただの調子のいい、金に困っていない幸せ顔の東京の私立大学生が出てきて、見ただけで蹴とばしてやりたかった。どれもこれもが能天気で、生きているリアリティーがなく、風俗描写もうさんくさかったのだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

  3. 3
    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

  4. 4
    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

  5. 5
    阪神・岡田監督に「契約延長説」急浮上…勇退説から二転三転も、背景に夫人のサポート

    阪神・岡田監督に「契約延長説」急浮上…勇退説から二転三転も、背景に夫人のサポート

  1. 6
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 7
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  3. 8
    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

  4. 9
    「飲みィのやりィのやりまくり…」高市早苗氏がブチまけていた“肉食自伝”の衝撃!

    「飲みィのやりィのやりまくり…」高市早苗氏がブチまけていた“肉食自伝”の衝撃!

  5. 10
    野茂英雄氏と借金トラブル 元1億円投手の佐野慈紀さんは今

    野茂英雄氏と借金トラブル 元1億円投手の佐野慈紀さんは今