大高宏雄
著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

無念すぎる「岩波ホール」の閉館…偉大なる歴史と功績を振り返る

公開日: 更新日:

 80年代から90年代はその姿勢がもっとも効果を発揮した時代ではなかったか。いつ行っても満席に近く女性客が多かった。ただ時代が進めば、その女性たちもだんだんと年を重ねて映画館を離れる人も増えていく。岩波ホールをはじめとして、80年代から90年代あたりまでのミニシアターの興行を支えたのは、監督のバリューも大きかった。岩波ホールでいえば、サタジット・レイはじめ、ルキノ・ビスコンティ、アンジェイ・ワイダ、テオ・アンゲロプロス氏らの名前が並ぶ。

 日本映画では、羽田澄子、黒木和雄、小栗康平監督らの貢献度も忘れてはならない。作家性という言葉があるが、その作家性を示す監督たちの独自の個性が作品の力となり、強力なバリューとなって岩波ホールファンの気持ちをとらえたものだ。ただ次第に弱体化し、作品、客層の変化につながっていったのは否めない。現代に続くミニシアターの厳しい道のりの一端もここにある。

 1970年代後半以降、地方から東京に出てきた映画青年だった筆者にとって、岩波ホールがどれほど輝かしくステイタス的な存在であったか。ビル地下階段から見える看板の威風、エレベーターで降りた先にある入り口からロビーの格調高さ、シックな装いの館内。映画を見る前から映画の物語が始まっていた。帰りに買うプログラムの見事さ。非日常から神保町の雑然とした街並みの日常の中に帰っていくときのざわざわした気持ち。今ではすべてが映画の物語のように感じられる。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「実際のところ二刀流を勧める立場でもなければ、考えたことも、その発想すらなかった」

    「実際のところ二刀流を勧める立場でもなければ、考えたことも、その発想すらなかった」

  2. 2
    入団直後から“普通でなかった”思考回路…完封を褒めても「何かありましたか?」の表情だった

    入団直後から“普通でなかった”思考回路…完封を褒めても「何かありましたか?」の表情だった

  3. 3
    “懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

    “懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

  4. 4
    「結婚はまったく予想していませんでした。野球をやっている間はしないと思っていた」

    「結婚はまったく予想していませんでした。野球をやっている間はしないと思っていた」

  5. 5
    「銀河英雄伝説」大ヒットの田中芳樹さんは71歳 執筆47年で120~130冊…どのくらい稼いだの?

    「銀河英雄伝説」大ヒットの田中芳樹さんは71歳 執筆47年で120~130冊…どのくらい稼いだの?

  1. 6
    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議

    《あの方のこと?》ラルクhydeの「太っていくロックアーティストになりたくない」発言が物議

  2. 7
    GLAYのTERU“ホテル不満ツイート”が物議…ツアー最終日「気持ちが上がらない」にファン失望

    GLAYのTERU“ホテル不満ツイート”が物議…ツアー最終日「気持ちが上がらない」にファン失望

  3. 8
    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

    木村拓哉「Believe」にさらなる逆風 粗品の“あいさつ無視”暴露に続き一般人からの告発投稿

  4. 9
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10
    小池百合子都知事の“元側近”小島敏郎氏が激白! 2020年都知事選直前に告げられた「衝撃の言葉」

    小池百合子都知事の“元側近”小島敏郎氏が激白! 2020年都知事選直前に告げられた「衝撃の言葉」