映画で理解するパレスチナ問題(後編)ユダヤ人とパレスチナ人は分かり合えないのか

公開日: 更新日:

 パレスチナ問題ほど複雑かつ混迷を極める問題はない。「アラビアのロレンス」は「アラブの独立」を描いたが、歴史の激流の中で第2次世界大戦後、「ユダヤの独立」としてイスラエルが建国され、パレスチナ難民が生まれた。イスラエルからすれば国連決議に基づいて樹立した国家をいかに守るかという自衛権の問題になるが、パレスチナ人にとっては一方的に奪われた郷土をいかに取り戻すか、占領からの解放と難民の帰還権の問題になる。そこに聖地エルサレムを巡る長年の宗教対立、シオニズムとイスラム聖戦(ジハード)思想、イランやサウジアラビアなどによる中東全域にわたる地政学的対立、膨大な石油利権と米ソ東西冷戦構造が絡み合い、パレスチナは地球上で最も争いの絶えぬ地域になった。

 前回紹介したように1995年にラビン首相が暗殺された後、オスロ合意は崩壊し、イスラエル政治は右傾化を強めていく。ガザ地区とヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植活動が推進され、2000年には右派政党リクード党首シャロンがエルサレム旧市街にある神殿の丘訪問を強行。パレスチナ人は民衆蜂起(インティファーダ)で抗議するも両者の「実力差」は圧倒的で、占領問題は泥沼化する。05年にはガザ地区からイスラエルが撤退するが、代わりに周囲を取り囲む「壁」を建設。パレスチナ人は検問所を通過するのにID確認を要求され、ガザは「天井のない牢獄」と呼ばれるに至る。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

  2. 2
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  3. 3
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  4. 4
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5
    別居情報を払拭?福山雅治の妻・吹石一恵の幸せ自粛ライフ

    別居情報を払拭?福山雅治の妻・吹石一恵の幸せ自粛ライフ

  1. 6
    堀江しのぶがスキルス性胃がんと判明 余命2か月の宣告に…

    堀江しのぶがスキルス性胃がんと判明 余命2か月の宣告に…

  2. 7
    原田美枝子「女優生活50年」で紫綬褒章の感慨…夫・石橋凌の“隠し子騒動”乗り越えて

    原田美枝子「女優生活50年」で紫綬褒章の感慨…夫・石橋凌の“隠し子騒動”乗り越えて

  3. 8
    政権に忖度するテレビ朝日に「株主提案」で問題提起 勝算はあるのか…田中優子さんに聞いた

    政権に忖度するテレビ朝日に「株主提案」で問題提起 勝算はあるのか…田中優子さんに聞いた

  4. 9
    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

  5. 10
    あえてGWに「裏金不起訴」で大炎上!萩生田光一氏と世耕弘成氏を待つ“市民感覚”の鉄槌

    あえてGWに「裏金不起訴」で大炎上!萩生田光一氏と世耕弘成氏を待つ“市民感覚”の鉄槌