映画批評家・前田有一氏が厳選 「映画三昧」で行く年来る年
寒波が続いて思わず出無精になりそうな年の瀬だが、引きこもってばかりいても始まらない。なにしろ今年の映画界、冬シーズンは元気いっぱいで、久々の傑作に出合える可能性も高い。むろん、お手軽な家族サービスにするもよし、だ。
■“日本押し”アニメ「ベイマックス」はファミリーで
ファミリーで楽しむ用途ならイチオシは「ベイマックス」(アメリカ、108分)。絶好調のディズニー最新作にして、「アナ雪」大ヒットの日本市場を大いに意識した「日本押し」アニメーションだ。
不審な事故で亡くなった兄が残した介護ロボ「ベイマックス」と共に、弟が死の真相をさぐる感動ドラマ。
舞台となる架空都市は東京とサンフランシスコの合成で、中央線そっくりの高架線やらラーメン屋台など、サラリーマンにはおなじみの風景をディズニーキャラが駆け巡るシュール感が味わい深い。
夫婦水入らずで刺激的なスリラーを楽しむなら「ゴーン・ガール」(アメリカ、149分)。「セブン」(95年)、「ファイト・クラブ」(99年)のデヴィッド・フィンチャー監督お得意の大どんでん返しが序盤から波状攻撃で襲ってくる退屈知らずのミステリードラマだ。不相応なセレブ妻をもらってしまった平凡な男が、失踪した妻を捜してくれと記者会見で呼びかけたら逆にワイドショーから妻殺害犯扱いされる、ふんだりけったりなお話。オスカー候補も納得の、これは本年度屈指の傑作といえる。