日本各地で不気味な地震が頻発…首都直下や南海トラフ地震が発生したら、その後は?

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 日本各地で不気味な揺れが続いている。気象庁の観測によると、今月に入って震度1以上の有感地震は沖縄・奄美、石垣島近海や石川県、さらに千葉県北西部から福島県で頻発。特に能登地方と福島県沖では震度4を観測している。首都直下や南海トラフ地震が発生したら、その後は……。

 ◇  ◇  ◇

 首都直下地震で自宅が壊れてしまっても、大方の人はこう思っているだろう。

「賃貸マンションに引っ越せばいいさ」「公営住宅もあるしね」「なんならプレハブの仮設住宅でもいいし」

 しかし、その仮設住宅にすら住めない恐れがある。都内の住宅ストックは約735万戸(2013年)。NHKの調査によると、首都直下地震で最大189万戸の住宅が全半壊し、57万戸の仮設住宅が必要になる。公園や運動場など約600カ所の仮設用の候補地があるが、それらの面積から換算すると、建設できたとしても8万戸ほどにしかならない。民間の賃貸住宅などを借り上げる「みなし仮設」で補ったとしても、なおも18万戸が不足するという。南海トラフ地震になると、もっと多く205万戸もの仮設住宅が必要とされる。

 賃貸マンションやアパートに住んでいる人はさらに気を付けたい。賃貸住宅が全半壊し、家主が建物を再築してくれたとしても、同じところに住めるわけではない。

「家主が建物を再築しても、借家人は再築された建物について賃借権などの権利を当然に取得することはできません。再築された建物を実際に借りることができるかどうかは、家主との任意の交渉によることになります」(法務省民事局)

 新しく建て替えられて、家賃が値上がりすることは十分に考えられる。被災するのは健常者ばかりとは限らない。高齢者や幼い子供たち、地震で負傷した人もいる。国の想定ではこういった生活が2年ほど続くことになるのだ。

被害の大きいエリアは「建築制限」がかかる

 首都直下地震は阪神・淡路大震災と比べ、火災による建物焼失が大きくなるとされる。内閣府によると、都心南部直下地震(M7.3)の被害は、最大死者が2万3000人。実に死者の7割が火災によるもので、焼失家屋は約41.2万棟、揺れによる倒壊などを合わせ約61万棟が被害を受ける。また、東京都防災会議の想定では、東京湾北部地震(M7.3)で建物被害は63万3800棟、多摩直下地震(M7.3)でも46万9100棟にのぼる。戸数にすれば、さらに多くなる。

 そこで国と自治体は「事前復興」の準備を進めている。初めて聞いたという人も多いだろうが、事前復興とは、災害前の減災対策と共に、被災後の街のデザインをあらかじめ決めておこうという計画のこと。多少乱暴な説明になるが、戦後、焼け野原になった東京は野放図に住宅が建てられたため、狭い道路、敷地ギリギリに建てられた家など震災に弱い街になってしまった。そこで、いったん更地に戻した土地に仮設住宅を置き、数年かけてきちんと計画した上で街を造り替える。高齢者施設、学校、病院などを街の中心部に起き、その周辺に高層マンションを建築するというのがモデル例だ。要するに、通常ではなかなかできない区画整理を地震の後にガッツリやろうということ。

 区内全体で火災焼失1355棟、揺れによる全壊1679棟を想定している豊島区では「建築制限」の計画もある。

「甚大な被害が生じた市街地では、そのまま無計画に再築が進められると、再び災害に弱い市街地に戻ったり、建築しにくい箇所が残る地区になると予想されます。そこで都市改造事業を行う『重点復興地区』を指定し、復興計画ができるまで建築制限を行うというものです」(豊島区都市計画課担当者)

 被災市街地復興特別措置法で最長2年の建築制限ができ、特に容易に除却できないコンクリート造りの建物が制限される。

「減歩」で所有する土地が削られる

 さらにもうひとつ、自分が所有する土地が削られる可能性もある。

「街を整備する一つの方法が、土地区画整理事業です。『減歩』といって土地の権利者が少しずつ土地を出し合い、道路の拡充や公共施設を整備していきます。地権者にとって宅地面積は減るものの、区画整理で利用価値の高い宅地が得られます。過去の震災復興事業でも行われてきました」(前出の豊島区担当者)

 宅地の価値が上がるため損失は生じないと考えられているが、土地所有者は無償で土地を提供しなくてはいけない。再開発が行われていない駅前や、一方通行の狭い道路脇に建つような家は土地区画整理事業に当てはまりそうだ。

 この建築制限には「第1次」と「第2次」があり、第1次はおおむね8割以上の家屋の焼失・倒壊が確認された地区が指定される。第2次は重点復興地区のことで、中規模被害であっても再整備されることもある。

 一方、南海トラフ巨大地震で壊滅的な被害が予想される地域は、もっと劇的な整備が行われそうだ。焼失・全壊15万9000棟、最大死者4万2000人(うち津波3万6000人)の被害を想定している高知県の担当者がこう言う。

「東日本大震災では早期再建のためにまちを離れたり、避難先でそのまま定住してしまうことで被災地域の人口が減少するといった問題が生じました。そこで本県は住民が希望を持って住み慣れた地域に住み続けられるよう、事前復興まちづくり計画を策定しています。事前復興のパターンはいくつかあり、防災集団移転促進事業で高台へ集団移転したり、内陸市街地と一体化したコンパクトシティー化などの計画があります」(南海トラフ地震対策課)

 津波で大きな被害を出した場合、「代替地」を与えられて移転するケースも出てくる。約250戸の住民が沿岸部から高台へ集団移転した岩手県宮古市のような例だ。

 先の豊島区では、仮設住宅への入居が始まるのが震災発生から1~2カ月後。約半年後までに都市復興基本計画が定まるが、元の生活に戻るまでに5~10年かかるとみている。広い道路と公園があり、駅前ロータリーの整備された新しい街が完成したとき、もうそこの住人ではなくなっている可能性は高い。

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