エミン・ユルマズ氏「2050年日経平均は30万円に」超少子高齢化の日本が劇的復活するワケ

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猛烈な“日本買い”がやってくる

 グローバル投資が日本にやってくるというと、世界的投資家のウォーレン・バフェットが日本の5大商社株を買っていることから、外国人が日本株買いに走ると考える人が多いと思います。しかし、それだけではありません。半導体工場がやってくるように、これから日本に直接投資(FDI)をする動きが活発化していきます。日本へのFDIは対GDP比1.1%で、昨年は中国を越えました。これは何を意味するのでしょうか。

 海外からいろんな会社が来て、日本で事業投資をする。事業投資は地元に雇用を生み、経済に貢献します。それが、日本のかなり地方のほうにまで行っています。半導体分野だけではありません。インバウンド関連では、シンガポールの不動産投資ファンドが新潟・妙高高原のスキーリゾートに2000億円超の直接投資をすると報じられました。2兆円プロジェクトの大阪IRも同様です。

 つまり、日本にお金が集まる。お金が集まれば人も集まる。人が集まれば情報も集まる。海外から直接お金が流れて、地方経済まで活発化していくと、今日本が抱えるさまざまな問題の解決につながるのです。移民に関して賛否両論ありますが、資本や技術が集まれば、高度な技術を持った移民が増えていくものと思われます。

■人口減少と自動化で日本はどうなる

 さらに今後進んでいく自動化、無人化、ロボット化、AI化が仕事を奪うと言われています。

 今は旧経済から新経済に移行している過渡期で、自動化は始まったばかりです。大多数の仕事への影響はまだ軽微ですが、このトランスフォーメーションが終わった時に最も困るのは、人口が多い国です。なぜなら、ものすごい勢いで作業効率化が進むことで、人間が携わる仕事がなくなり、人口が多い国では人があぶれていくからです。

 大半の人が理解していないのは、自動化というのは今までの技術とは全く異なるということ。

 人々は19世紀まで馬車に乗っていたのが、20世紀になると馬車が自動車になり、動力がエンジンに代わり馬が不要になっても人間が不要になったわけではありませんでした。しかし、これからの時代、無人で動くので運転手そのものが不要になる。

 つまり、私たちは「20世紀の馬」と同じ運命にある中、人が携われる職がどんどん減っていき、職の争奪戦になったとき、その国の秩序は乱れていきます。これから将来に向けて人口が多い国は大変だと思います。

 日本に関していうと、全自動化が完成した時にはだいぶ人口が減っているので、人口増加国よりダメージはかなり少ないはずです。自動化時代にとって、人口減少は追い風と言えるのです。移民大国と言われるアメリカでさえ、現在の人出不足の中で移民を増やそうとしていません。これは将来の人余りを見越してのことだと私は思います。

 今の日本はどうでしょうか。有効求人倍率が1.3倍程度なので、30%ほど仕事のほうが多い状態です。しかし、問題なのは、セクターごとにあまりにも偏りが出ていることです。事務や総務などは人が余っているのに対して、建設や介護など3Kと言われる仕事は慢性的な人手不足です。

 有効求人倍率が高いジャンルに人を集め、この不均衡を是正するには賃上げをするしかありません。人が集まらないのは単純にペイ(支払い)が良くないから。みんなが就きたいと思うくらい賃金を上げなければならないのです。

 自動化が完成した将来、ホワイトカラーもブルーカラーも仕事が少なくなり、世の中は今とは全く違う景色になっている可能性が高い。

 そんな中で多くの人はどうやって収入を得るのかというと、全国民にベーシックインカムを出さないといけなくなるでしょう。欧米はパンデミックでベーシックインカムの社会実験をやったところ、ものすごいインフレになった。日本もこれからインフレがさらに進み、2050年ごろまで続くと見ています。

 日本人はまだインフレという概念に戸惑っていて、政官財のトップですらインフレを一過性のものと考えていて、頭が切り替えられていません。だから、多くの日本人はデフレマインドのままで投資どころかお金を遣おうとしないし、まだ貯蓄しようとしている。

 しかし、私は悲観していません。なぜなら、日本人は変わるまで時間がかかりますが、変わった時は右に倣えで一瞬で切り替わるからです。マインドがデフレからインフレに変わった途端、日本でも消費も投資も活発化していくことでしょう。

 今後、仕事がなくなっていくことへの漠然とした不安があると思います。再就職や転職に困らない業種とそうでない業種があるので、ある意味すでに二極化している状態です。現在もプログラマーや介護医療関係は足りないわけですから、スキルワーカーはどこでも働ける状態にある訳です。

 一方で事務や総務、あまりスキルがいらない営業などはすでに人があり余っている状態です。そもそも論として、これから仕事が減っていく訳だから、スキルを持っていない人にとって難しい時代になるかもしれません。

 どれくらいのトランジション(移行)期間が必要かはわからないけれど、コロナの3年間だけで私たちの生活様式は大きく変わりました。現金主義だった国でいつの間にかキャッシュレスが普及していって、気づいたらコンビニでもお金のやり取りはマシーンが主流になっていて、無人レジが登場してレジ打ちも必要なくなりつつあります。

 機械のメンテナンスに人が必要なので、完全に人が不要になることはないものの、確実に職の概念が変わっていくことでしょう。あと単純作業はほんとうに不要になります。そういう職にしか就いていない人は危険ですから、会社に寄りかからずに済むような何かユニバーサルに評価される技能を身につけるなりしたほうがいいでしょう。

 今ある仕事がなくなっていく肌感覚を、多くの人が持っていると思います。そうなったときのために、リスキリングをすればいいのです。あとは本人の努力次第です。こうした話は今に始まったことではなく昔からあるものです。

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