日ハム新庄監督“えこひいき”の思惑 横一線と言いつつ「万波・清宮・吉田」に甘いのは…

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 いよいよ尻に火がついたようだ。

 日本ハム新庄剛志監督(50)が名指しこそ避けたが「一軍に残りたいという姿勢が全く見えない」と珍しく怒りをにじませてから一夜明けた11日、打線は計12安打と奮起。5-2でオリックスを下した。

■敵チームにも頭下げる

「3番・一塁」で先発し、二回2死一、二塁から右越え二塁打で2打点を挙げた5年目の清宮幸太郎(22)はお立ち台に上がると、「成長途中だと思うんですけど、一軍の舞台でクリーンアップを組ませていただいて、すごく良い経験をさせていただいていると思うんで、絶対にこのチャンスを生かしたいと思います」と神妙な面持ちだった。

 新庄監督は昨秋の就任会見から「メンバーは横一線。目先の1勝より今後の成長」と言い続け、今季を「1年間のトライアウト」として、競争を促しチームの底上げを図っている。

 とはいえ、中堅やベテランよりも若手の起用が目立つように、選手がみな同じ扱いを受けているわけではない。中でも優遇されているのは清宮に加え、外野手の万波中正(22)、そして投手の吉田輝星(21)の3人だろう。

 清宮と万波はそれぞれ打率.203、同.179。成績だけなら二軍落ちしても不思議ではないし、実際に王や清水ら二軍降格している選手もいる中、新庄監督は粘り強く使い続けている。結果、2人の出場数は31試合(チーム6番目)と29試合(同7番目)。レギュラーと遜色ない出場機会を与えられている上に、新庄監督は覚醒の手助けになるならばと、ライバルチームにすら頭を下げている。キャンプでは中日の立浪監督に清宮の指導を仰ぎ、去る8日の西武戦前には、本塁打王を独走する山川をつかまえて、万波への指導をお願いした。

 吉田にしても、今季初登板こそ先発だったものの、以降は中継ぎとしてチーム最多の15試合に登板。0勝0敗、防御率2.61と成長の兆しを見せている。新庄監督の投手起用は一部の投手を除いて先発なのか中継ぎなのか役割が一定しない中で、吉田だけは一貫して負け試合か大量リードしている勝ち試合での起用が多い。

 新庄監督は「徐々に緊迫したところで投げさせる」と話しており、実力が身に付くまではプレッシャーがかからない場面でノビノビ投げられるよう配慮している。キャンプ中には阪神のスペシャルアシスタントである藤川球児氏に指導をしてもらい、吉田は今も藤川氏から助言をもらっているという。

4番、エース候補不在

 新庄監督は就任会見で、「投手3人、野手4人のタレントを育てたい」と話した。清宮らはその筆頭候補として白羽の矢が立ったわけだが、なぜここまで3人にこだわるのか。球団OBが言う。

「今のチーム編成を考えると、将来的に『4番』と『エース』になれる素材は清宮、万波、吉田の3人しかいない。そもそも、今の日ハム打線は本塁打打者が不在。本来は中距離打者である近藤や野村が長打狙いの打撃をして、自分の持ち味を殺してしまっている。清宮や万波が覚醒すれば近藤も野村も本来の自分の役割を全うできるし、打線としてのつながりも生まれる。吉田も、上沢や伊藤、加藤に並ぶくらいの実力を身に付けてくれれば言うことありません」

■育成球団の看板倒れ

 球団の思惑もあるという。

「フロントの稲葉GMが『打撃コーチ』として清宮を粘り強く指導しているのはもちろんですが……」と、球界関係者がこう続ける。

「特に清宮と吉田の2人はドラフト1位で獲得した選手であり、高校時代から甲子園で活躍して大きな注目を集めていた。日本ハムは『スカウティングと育成』によってチームを強化することを最大のテーマに掲げている。清宮と吉田がこのまま頭打ちの状態が続くようなら、方針は看板倒れになり、今後のスカウト活動にも影響しかねない。球団としてはそれだけは避けたいのです」

 3人の才能が開花すれば、球団の利益アップにもつながる。

「来年から移転する新球場の客入りが予測しにくいだけに、ファンが球場に足を運びたくなるような選手が育ってほしい。入場料収入はもちろん、グッズ収入や新規のファン獲得につながればと球団は期待しています。だから親会社も、『今季は優勝を目指さない』という新庄監督の方針を静観しているのです」(前出の球界関係者)

 前出の球団OBによれば、特別扱いの成果が少しずつ見え始めているという。

「清宮は秋季キャンプで稲葉GMとフォーム固めに取り組んできたが、オフにソフトバンクの柳田に弟子入りするなど、あれもこれも取り入れようとした結果、自分のフォームを見失った。今年のキャンプで久々に清宮のスイングを見たあるOBは『これはひどい』と愕然としていたくらいですが、今は再び稲葉GMの指導に真摯に取り組み、体が前に突っ込まなくなり、自分の間合いでバットを振れるようになりつつある。万波ももともと練習熱心ですし、新庄監督の『ボールの上を削り取るように』という教えを守り、ガムシャラにやっている。今の姿勢を続ければ、少しずつ結果も付いてくるでしょう。吉田も藤川氏の指導で掴んだものがあるようで、手首の立て方や体の回転を意識しつつ、キャッチボールをより重視するようにもなったそうです」

 3人は将来の4番とエース候補として、ビッグボスや球団の大きな期待に応えられるか。

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