五木寛之 流されゆく日々
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連載11823回 俺たちはどうボケるか <4>
(昨日のつづき) 人は老いる。 同じように、個人差はあってもすべての人間はボケる。 そのことに抵抗するのではない。ボケることを正しく肯定した上で、ボケかたを考えるのだ。 正しいボケ、と…
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連載11822回 俺たちはどうボケるか <3>
(昨日のつづき) 世の中は、はっきりいって格差社会である。どれほど機会均等が進んでも、経済的条件が均等化しても、完全な平等はありえない。 生まれながらにして個人差はある。もし大谷選手と私が並ん…
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連載11821回 俺たちはどうボケるか <2>
(昨日のつづき) 人生の四季の後半にあたるのが、<林住期>と<遊行期>だ。 <林住期>といっても、べつに林の中に住むわけではない。鴨長明のように早くから世間をリタイアして、人里離れた林間に住むラ…
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連載11820回 俺たちはどうボケるか <1>
最近、ボケをめぐる論議が盛りあがっている。 新聞、雑誌、出版などの世界でも、このところボケという活字を見ない日はないくらいだ。ボケの問題は現代人にとっての最大の不安材料といっていいのかもしれない…
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連載11819回 現代の<3K>とは何か <5>
(昨日のつづき) その専門紙配達を請けおう会社は、池袋の先の東長崎にあった。 会社といっても、個人企業に毛がはえたような事務所である。そこの2階に6、7人の学生アルバイターたちが寝泊りしていた…
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連載11818回 現代の<3K>とは何か <4>
(昨日のつづき) 私が学生の頃、というのは1950年代の前期、昭和20年代の終りの時代だった。 地方から上京して大学に学ぼうとする若者たちにとって、東京へ出ることは一大冒険だったはずだ。 …
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連載11817回 現代の<3K>とは何か <3>
(昨日のつづき) ブッダがきわめた真理を学ぶため、多くの修行者たちがブッダのもとに参集した。その集団を<サンガ>という。 彼らは真実の法(ダルマ)を追求するために日夜修行し、ひたすら努力する。…
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連載11816回 現代の<3K>とは何か <2>
(昨日のつづき) いまから振り返ってみると、われながら良く完走したものだと感心しないわけにはいかない。 かつて映像と出版の二刀流で試みた『百寺巡礼』の旅のことである。 最初はワンクールぐら…
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連載11815回 現代の<3K>とは何か <1>
かなり古い話になるが、ひところ新聞や雑誌で<3K>という言葉が流行ったことがあった。 当時の現場労働者の仕事の現実を反映した表現である。 <キツい> <汚い> <危険> この、それぞれ…
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連載11814回 昔ばなしの喪失 <5>
(昨日のつづき) 生成AIと宗教の問題に関しては、簡単にまとめるわけにはいかないので他日に回す。 宗教以外にチャットGPTの泣きどころはどこにあるのか。 人は「昔ばなし」をしたがるものだ。…
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連載11813回 昔ばなしの喪失 <4>
(昨日のつづき) チャットGPTをめぐる論議は一向におさまる気配はない。 これを簡単に<人工知能>と言うべきか、<対話型AI>と呼ぶか、<生成AI>と称するのか、表現がさまざまなので、ややこ…
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連載11812回 昔ばなしの喪失 <3>
(昨日のつづき) 歴史を語る言説は、私たちの周囲に氾濫している。 新聞の広告を眺めても、いわゆる古代史から現代史にいたるまで、無数の本が出版され、広く読まれている。 しかし、歴史と昔ばなし…
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連載11811回 昔ばなしの喪失 <2>
(昨日のつづき) では、面白かった回顧談の事を思い返して書いてみよう。これも昔ばなしの一種にはちがいない。 かつて私がリトルマガジン『面白半分』の編集長をつとめた頃、雑誌に金子光晴さんの昔ばな…
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連載11810回 昔ばなしの喪失 <1>
年寄りの話が一般におもしろくないのは、自慢話が多いからだ。 本人は自慢している気はなくても、聞いているほうからすると自慢ばなしにきこえるらしい。 最近、話題になっている<文節の終りにつける「…
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連載11809回 カタカナ英語の時代 <4>
(昨日のつづき) 「尾崎紅葉の名前ぐらいは知ってるよな」 「ああ、あれですね、コンジキヤマタの作者でしょう?」 「まあ、とにかく、その紅葉が弟子の泉鏡花にあてた手紙というのを見たんだが、これはテ…
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連載11808回 カタカナ英語の時代 <3>
(昨日のつづき) 「チャットGPTとか、ポリコレとか、まだそんなことを気にしてるんですか」 と、若い友人のY君に笑われた。 「いまやジャーナリズムの話題は、マルテン問題に移ってます。三日見ぬ間…
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連載11807回 カタカナ英語の時代 <2>
(昨日のつづき) 先日、新聞のオピニオン欄に、あるかたの論文というか寄稿がのっていた。経済に関する意見である。 興味ぶかく読んだのだが、その筆者の肩書きが、めっぽう長くてややこしい。 <○○…
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連載11806回 カタカナ英語の時代 <1>
『言語の本質』(中公新書)がバカ売れしたのは、大きなニュースだった。ちゃんとした学問的な本でも、それを読む人たちが沢山いるのだ。出版界にとって明かるい話題だったと思う。 それだけではない。その本の…
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連載11805回 今世紀最強の怪物 <4>
(昨日のつづき) 今世紀最強の怪物が、生成AI(チャットGPT)であることは間違いない。今日の朝刊にも、新しい芥川賞の作家が、どのようにチャットGPTを利用したかについてくわしく語った記事が大きく…
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連載11804回 今世紀最強の怪物 <3>
(昨日のつづき) 生成AI(チャットGPT)のことを、今世紀最強の怪物、などと書いていたら、それにもまさる怪物が出現した。 今朝、起きた時から、やたらと鼻水がでる。垂れるなんてもんじゃない。流…