オリ1位・藤川敦也 山本由伸の恩師も太鼓判、最速153km右腕を女手ひとつで育てた「看護師」の母

公開日: 更新日:

藤川敦也(オリックス1位・18歳・投手)

 名前の由来は、元ヤクルトの名捕手・古田敦也氏。野球好きだった父・真一さんが名付けた。

 真一さんは東海大五高(現・東海大福岡高)の右腕エースとして活躍。卒業後はビジネス関係の専門学校に進み、社会人になってからも草野球を続けた。やがて友人と共に居酒屋を開き、その店で後に妻となる七恵さんと出会い、結婚。2年後に長男として藤川が生まれた。真一さんと遊びの延長の感覚で野球に触れて育ち、小学1年からソフトバンクの「ホークスジュニアアカデミー」に参加。週1回、2時間ほど汗を流した。サッカーチームにも所属していたが、小4からは野球一本に。「穂波ブルースカイ」の門を叩いた。

 一家が野球中心に回り始めた直後、夏のある日のことだった。

「主人が突然、『頭が痛い』と。病院の診断は、『頚椎動脈解離』で、血管にこぶのような血栓ができていたようです。医師からは『生まれつきこういう人もいます』と説明があり、主人の様子も落ち着いていたためか、ひとまず処方された薬を飲み、経過観察することになりました。他の病院でセカンドオピニオンを受診していればと、悔やんでも悔やみきれません」(七恵さん)

 2日後の早朝、真一さんの容体は急変する。午前5時、藤川の弁当を作っていた七恵さんは、トイレから大きな物音が聞こえた。駆けつけると、真一さんが倒れていた。救急搬送された病院の診断は、くも膜下出血。10日間ほどの懸命な治療も、帰らぬ人となった。

 七恵さんは病院で看護の仕事をしながら藤川と6歳下の妹を女手ひとつで育てた。どれだけ慌ただしく過ごしていても、仕事の合間や家事の手を止めたとき、ふと涙がこぼれることがあった。藤川は多感な時期。大好きだった父を失い、塞ぎがちになった。

「家ではいつもひょうきんなことをして家族を笑わせていましたが、それがまったくなくなった。そんなある日、学校から『敦也君がケンカをした』と連絡が入ったんです。優しい子で、これまでそんなことが一度もなかっただけに、ハッとしました。泣いてばかりはいられない。子供たちのために、自分がしっかりしなければいけない。そこで現実にちゃんと向き合うことができました」(同)

 平日は朝6時に起きて子供たちの朝食を作り、幼い娘の身支度を整えて保育園へ送る。仕事を終えると、延長保育が終わる午後7時に間に合うように迎えに行き、急いで帰宅。夕食を作り、洗濯機をスイッチオン。娘を寝かしつけたあとは、藤川の泥まみれのユニホームを手洗いする。朝と晩は米を3合炊き、骨を育てるためにと冷蔵庫から牛乳は絶やさなかった。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  5. 5

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  1. 6

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  2. 7

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  3. 8

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 9

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  5. 10

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較