「反<絆>論」中島義道氏

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<絆>とは本来、人を縛るものだ。夫婦や親戚、地域社会の<絆>が、無条件に“善いこと”ばかりを含まないのは、多くの人が体験的に知っているだろう。本来のマイナス面が消し去られ、明るい面ばかりがクローズアップされる。

「私は、<絆>はなるべく“ゆるい”方がいいと思っている。<絆>をあがめている人ほど、時に感じる<絆>の不便さに何も言えないものです。そして、<絆>に異論を唱えて参加しようとしない人を、“わがままだ”と言って裁き、縛り、むなしいつながりを持とうとする。これは、<絆>の劣化に他なりません」

 哲学的な視点から、自分の感覚と信念に忠実であれと教えてくれる本書。<絆>に不自由さを感じ、そこから解き放たれたいと感じている人は必読だ。

(筑摩書房 760円+税)

▽なかじま・よしみち 1946年福岡県生まれ。東京大学法学部卒業。電気通信大学教授を経て、現在は哲学塾主宰。主著に「私の嫌いな10の言葉」「哲学の道場」「哲学の教科書」などがある。

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