「熱帯建築家 ジェフリー・バワの冒険」隈研吾、山口由美著

公開日: 更新日:

 バワの名を世界に知らしめたインフィニティープールのオリジナルは、1981年開業の「トライトン・ホテル」(現ヘリタンス・アフンガラ)にある。同ホテルには、もうひとつ「グリーンプール」と呼ばれる水面に覆いかぶさるように樹木が広がったプールがあり、ただ泳ぐだけの施設だったプールが建物の一部、そしてリゾートの仕掛けとして発展していった原点が垣間見られる。

 ビーチリゾートが水との融合なら、内陸部に位置する「ヘリタンス・カンダラマ」では、建物が岩山と緑と絶妙なコラボレーションを生み出している。岩山を抱くように立つ同ホテルでは、エントランスや廊下などに岩山がそのまま内装の一部として取り込まれている。一方で、その外周はジャングルと一体化しているため、テラスなどに野生の猿が出没したりするという。もちろん湖畔を望むインフィニティープールも備えている。

 その他、自らの理想郷を構築するために38歳で建築家になった彼が心血を注いでつくり上げた自宅「ルヌガンガ」や、仕事場「ナンバー11」なども網羅。

 建築家の隈氏は、20世紀から21世紀にかけて、建築の時代から庭の時代へと転換した建築シーンにあって、「『庭の時代』の到来を決定的にしたのが」バワだったとその作品を読み解く。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

  3. 3
    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

  4. 4
    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

  5. 5
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  3. 8
    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

  4. 9
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  5. 10
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと