「細野晴臣と彼らの時代」門間雄介著

公開日: 更新日:

 音楽活動50周年を迎えた細野晴臣の起伏の激しい音楽人生を、仲間たちとの関わりの中で描いた力作評伝。松本隆、大瀧詠一、鈴木茂、坂本龍一、高橋幸宏、松任谷正隆ら、日本のポップミュージックを牽引することになる彼らが、まだ何者でもなかった時代から書き起こした青春群像物語でもある。

 1960年代の終わり。立教大学の学生だった細野晴臣は、学園闘争の嵐とは無関係に音楽的興奮に浸っていた。白金台にあった自宅の応接間に音楽好きの仲間がやってきては、レコードを聴き、楽器を弾き、音楽談議で時間を忘れた。そうした中で4人組の「はっぴいえんど」が結成された。

 自分たちの音楽に「サムシングエルス」を求めた彼らは、日本語の詞でオリジナル曲をつくり、日本語とロックの融合を目指した。それは当時大ブームだったグループサウンズとはまったく別の音楽だった。アルバム「風街ろまん」で目標を達成すると、はっぴいえんどはわずか2年で解散。細野は狭山の米軍ハウスに居を移し、ソロアルバムづくりに着手、「HOSONO HOUSE」をリリースした。

 プロとして成功を収めても、細野はその場所にとどまろうとはしない。新しいサウンドへの好奇心に突き動かされて変わり続けた。エキゾチックサウンド、コンピューターサウンドと、常に次を求めた。

 1978年に少し年下の高橋幸宏、坂本龍一とともにYMOを結成。3人の出会い、テクノカットの由来、予期せぬ大成功、注目され過ぎたストレス、「散開」までの顛末が、3人の口から語られている。

 その後、しばらく音楽的隠遁生活を送っていた細野を、再び表舞台に引っ張り出したのは昔の仲間たちだった。それぞれの音楽を追求していた個性豊かな彼らが、年を重ねて再会し、ともに音楽を楽しむ。一昨年、ロサンゼルスで行ったライブでは、アメリカの若者を熱狂させた。70歳を過ぎて、細野晴臣は現在進行形だ。

(文藝春秋 2200円+税)

【連載】ノンフィクションが面白い

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「ちむどん事実婚」にSNS困惑…黒島結菜は女優として瀬戸際、宮沢氷魚の“惚れっぽい”過去発言も心配

    「ちむどん事実婚」にSNS困惑…黒島結菜は女優として瀬戸際、宮沢氷魚の“惚れっぽい”過去発言も心配

  2. 2
    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

  3. 3
    黒島結菜の妊娠&事実婚の前年に先輩・土屋太鳳が示した"お手本" 芸能界“デキ婚ラッシュ”へ

    黒島結菜の妊娠&事実婚の前年に先輩・土屋太鳳が示した"お手本" 芸能界“デキ婚ラッシュ”へ

  4. 4
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 5
    事務所の社長を自ら解雇…小林幸子はマスコミから袋叩きに

    事務所の社長を自ら解雇…小林幸子はマスコミから袋叩きに

  1. 6
    巨人の救世主になるか?緊急補強したヘルナンデスは10年以上マイナー塩漬けの苦労人

    巨人の救世主になるか?緊急補強したヘルナンデスは10年以上マイナー塩漬けの苦労人

  2. 7
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8
    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

  4. 9
    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?

    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?

  5. 10
    キャンプバブルに浮かれすぎた?「スノーピーク」が99%減益で非上場化も…再編は波高し

    キャンプバブルに浮かれすぎた?「スノーピーク」が99%減益で非上場化も…再編は波高し