「女性差別はどう作られてきたか」中村敏子著
SDGsの5番目のゴールとして掲げられているのが「ジェンダーの平等を実現しよう」だ。男女平等が叫ばれて久しいが、「#MeToo運動」や五輪組織委の森前会長による女性蔑視発言なども記憶に新しく、女性差別はいまだ根強く、そして身近にも残っていることを意識させられる。
しかし、そもそもなぜ女性は差別の対象となったのか。本書では、人類が歴史の中で女性差別をいかに構築してきたかを、「男性が権力をもって物事を決定し、それに女性を従わせる」という「家父長制」などをキーワードに分析している。
ヨーロッパにおいて女性を男性より劣る存在として初めて明文化したのは、古代ギリシャの大哲学者であるアリストテレスとされている。その内容は、“男性こそ本質であり、よりよい存在である。原理を体現しているのは男性であり、何かをできる能力を持つが、女性は単なる材料であり、何もできない無能力の存在”と、何とも過激な序列をつけている。
そして、このような女性差別の意識はキリスト教によってさらに明確化され、社会が近代化されても意識は変わることなく、女性は男性より劣った存在として家に押し込まれ、家族の中でも男性(夫)による女性(妻)支配が確立されていったという。
かたや日本はどうか。実は江戸時代まで「家」の継続が最大の目的であり、夫婦がそれぞれの重要な役割を担っていたため、ヨーロッパとは異なり妻の独立性は維持されていたという。しかし明治時代となり、西洋国家に倣った法整備が進む中で家父長制が根付き、女性差別も生まれていったと本書。本来の思想を思い出せば、実は日本こそジェンダー平等の先進国になれるかもしれない。
(集英社 858円)