「映画はいつも『眺めのいい部屋』」村田晃嗣著

公開日: 更新日:

 かつてハリウッドはロナルド・レーガンという元B級俳優をホワイトハウスに送り込んだが、ハリウッドとホワイトハウスの関係は1898年の米西戦争にまで遡る。

 戦争の様子はニュース映画として多くのアメリカ人に届けられ、活字とは比較にならないインパクトを与えた。その結果、国民的英雄となったのがルーズベルト大統領だ。以後、いかなる大統領も映像の中での自分のイメージを無視して、その職を遂行することができなくなったのだという。

 やがてフィクション映画の中でも実在、架空の大統領が描かれるようになる。映画が実在に先行したのは「ザ・マン」「ディープ・インパクト」で演じられた黒人大統領。しかし黒人大統領はSF作品に登場することが多く、非現実性のアイコンであったという。

 新旧の映画を織り交ぜながら、権力と反権力の関係、家族、宗教、スポーツまで日米の映画を手がかりに国際政治学者による世界を見通す映画エッセー。

 ほかにも「映画の中の不治の病」をテーマにしたものや、「ジョーズ」に影響を与えたのは「白鯨」、怪獣「ゴジラ」はゴリラとクジラの合成語などトリビアも満載で、映画の楽しさ、奥深さが伝わってくる。

(ミネルヴァ書房 3080円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「ちむどん事実婚」にSNS困惑…黒島結菜は女優として瀬戸際、宮沢氷魚の“惚れっぽい”過去発言も心配

    「ちむどん事実婚」にSNS困惑…黒島結菜は女優として瀬戸際、宮沢氷魚の“惚れっぽい”過去発言も心配

  2. 2
    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

  3. 3
    黒島結菜の妊娠&事実婚の前年に先輩・土屋太鳳が示した"お手本" 芸能界“デキ婚ラッシュ”へ

    黒島結菜の妊娠&事実婚の前年に先輩・土屋太鳳が示した"お手本" 芸能界“デキ婚ラッシュ”へ

  4. 4
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 5
    事務所の社長を自ら解雇…小林幸子はマスコミから袋叩きに

    事務所の社長を自ら解雇…小林幸子はマスコミから袋叩きに

  1. 6
    巨人の救世主になるか?緊急補強したヘルナンデスは10年以上マイナー塩漬けの苦労人

    巨人の救世主になるか?緊急補強したヘルナンデスは10年以上マイナー塩漬けの苦労人

  2. 7
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8
    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

  4. 9
    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?

    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?

  5. 10
    キャンプバブルに浮かれすぎた?「スノーピーク」が99%減益で非上場化も…再編は波高し

    キャンプバブルに浮かれすぎた?「スノーピーク」が99%減益で非上場化も…再編は波高し