「おしまい図鑑」真山知幸著

公開日: 更新日:

「おしまい図鑑」真山知幸著

「あなたが死の床についたと仮定しよう。自分の人生を振り返って、満足のいく一生であったか、そうでなかったかを判断する基準は何であると思うか」

 これは、発明王エジソンが設立した奨学金に応募した高校生を選抜するための試験問題のひとつだそうだ。

 本書は、そのエジソンをはじめ、各分野で歴史に残る偉業を成し遂げた「すごい人」たちが、「人生の最期の時間をどう過ごし、どんなふうに人生を終えたか」を紹介するビジュアル生き方読本。

 世界のファッションに大きな影響を与えたココ・シャネルは、87歳で亡くなる直前まで働き続けた。孤児院育ちで、働くことで社会とのつながりを持ってきた彼女にとっては、休日が苦痛だったようで「日曜日が嫌い」と言っていたらしい。

 法律で定められた労働時間の制限も、周囲の制止も無視して働き続け、ある夜、突然体調が悪化。「ほらね、こうやって人は死んでいくのよ」と言い残し、亡くなったその日は、彼女の嫌いな日曜日だった。

 天才建築家アントニ・ガウディは、サグラダ・ファミリアの建築に携わって30年が経った62歳のときに、「この仕事に生涯を捧げよう」と決断。以来、全ての仕事を断り専念。どれだけ一心不乱に打ち込んだとしても、自分が完成を見ることはできないのは明らかだからこそ、次の世代のために模型で最終案を示し、重要な部分の仕上げを74歳で事故死するその日まで続けたそうだ。

 このように最後まで仕事に専念した人もいれば、「セビリアの理髪師」で知られる作曲家ロッシーニのように37歳で引退して、美食家として第二の人生を送った人もいる。

 限りある人生をいかに過ごすか。30人のすごい人たちの「おしまい」をヒントに考える。

(笠間書院 1540円)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

  3. 3
    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

  4. 4
    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

  5. 5
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  3. 8
    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

  4. 9
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  5. 10
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと