「関西フォークとその時代」瀬崎圭二著
「関西フォークとその時代」瀬崎圭二著
1960年代から70年代にかけ、若者の絶大な支持を得た関西フォークは、流行歌であるとともに、あくまでも「民衆の歌」「民謡」であることにこだわった音楽表現で、それがひとつの運動として展開したことに最大の特徴があるという。社会風刺と社会批判を繰り広げたその歌は、当時の学生運動や市民運動ともつながり、きわめて広範で強固な力を持つに至った。
実は関西フォークには現代詩の運動としての側面もあり、その理論的な支柱だったのが詩人であり、英語教師だった片桐ユズルという人物だった。
当時難解になってしまった現代詩を、より多くの人々に開いていこうとした片桐は、関西のフォークシーンを支えることでフォークソングの歌詞を通じて「詩」を確保しようと試みていたという。
本書は、そうした、片桐ユズルと関西フォークの関係に注目。さらに詩人の有馬敲や児童文学者の今江祥智らの文学者、岡林信康や高田渡、友部正人ら関西フォークを牽引したミュージシャンらの軌跡を振り返りながら、その歌詞と詩の関係を考察した論考。
(青弓社 3080円)