野地秩嘉
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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第22回>拷問シーンで本当に痛がっている顔は必見

公開日: 更新日:

 それにしても高倉健は苦労しただろう。本人以外はすべてペルシャ語でセリフを言っているのだから。慣れない環境、食事、異国の言葉で相当、ストレスがたまったのではないか。しかし、この体験は彼にとってプラスになったろう。

 この後、彼は「海へ~See you」でアフリカロケを体験する。「ブラック・レイン」ではアメリカの映画スタッフと仕事をする。そんな時、普通の日本の俳優ならば臆することもあるだろうが、たったひとりでイランの撮影現場に乗り込んだ高倉健にとって、それ以後、海外での仕事は楽に感じたのではないか。

 さて、高倉健ファンにとって「ゴルゴ13」の見どころはふたつある。ひとつは非常に珍しいシーンだ。彼は天井からロープで吊るされてイラン人の悪漢に拷問される。しかも、悪漢はビシバシと鞭をふるう。高倉健だからといった遠慮は一切ない。イラン人の俳優は手加減せずに高倉健を殴っている。もし、日本の映画俳優だったら、これほど無慈悲に高倉健をビシビシ鞭打つことはできないだろう。ほんとうに痛がっている高倉健の顔を見たければ、「ゴルゴ13」しかない。

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