塩澤実信
著者のコラム一覧
塩澤実信ノンフィクション作家

長野県生まれ。双葉社取締役編集局長などを歴任。レコード大賞元審査員。「昭和の流行歌物語」「昭和歌謡 100名曲」など著書多数。

「勝手にしやがれ」はキザな沢田研二だからこそサマに

公開日: 更新日:

ソロ歌手としても人気を不動にした一曲

 このGSブームはあっという間に終わった。生き残ったのは、堺正章や井上順、岸部一徳、ショーケンこと萩原健一らホンの一握り。それも俳優に活路を見いだした者が多かったが、ジュリーはタイガース解散後、紆余曲折ありながらも人気ソロ歌手としても見事に復活を果たした。「危険なふたり」「追憶」、そして「時の過ぎゆくままに」を連発。この年、27歳だったジュリーは、7歳年上のザ・ピーナッツの姉・伊藤エミと結婚。当時、人気絶頂歌手にとって結婚は大きなマイナスに動くものだが、勢いで乗り切った。その2年後に発売されたのが「勝手にしやがれ」だった。王貞治がホームラン世界記録の756本を打った1977年は、ピンク・レディーの「ウォンテッド」、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」など阿久悠の全盛期でもあったが、「勝手にしやがれ」はレコード大賞はじめ、賞という賞をほぼ総ナメにした。

 阿久悠がこの曲のヒントを得たのは、世界的にヒットしたジャン・ポール・ベルモンド主演の映画「勝手にしやがれ」からだった。最初にタイトルがひらめき、映画の中で無理をして女の前でええカッコするキザな男にテーマを得て、大胆な詞を書いたのだった。

 そのタイトル、詞ともに、いつも斜にかまえ、キザったらしと照れを併せ持った沢田研二でなければサマにならない歌だった。

 曲の最中に、かぶっていたパナマ帽を客席に投げるパフォーマンスは、子どもたちが学校でマネをするほど話題にもなった。その意味で「日本のショービジネスを変えた男」として、人気を不動のものにした代表曲なのである。

 最近の沢田研二は、大スターの矜持は持ち続けているものの、年齢相応の役柄を表現する機会に久しく恵まれていない。残念な気がするのだが、キザな本人は「勝手にしやがれ」と思っているのだろう。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  1. 6
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

  2. 7
    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

  3. 8
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9
    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10
    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる

    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる