荒木経惟
著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<13>勘三郎さんとはすごく通じ合っていたような気がするね

公開日: 更新日:

 勘三郎さんを初めて撮ったのは浅草で、「平成中村座」で『法界坊』を演るときなんだ。あれから20年が経つんだねぇ。勘三郎さんとは、気持ちがすごく通じあってね、好きだったねぇ~。そのときは勘九郎だったけどね。今度、浅草に「平成中村座」をつくって『法界坊』を演るからって、俺を存分に引きだすのは荒木だって言ってくれてさ。ご指名されるのが一番嬉しいことなんだよ。勘三郎さんの他の演目も撮ったけど、最初が『法界坊』なんだ。(2000年、中村勘九郎〔05年に勘三郎を襲名〕が隅田公園の「平成中村座」にて歌舞伎公演『法界坊』を上演するにあたり、勘九郎と浅草界隈を歩きまわり撮影した)

 嬉しかったね。引っ張り回してくれたもんな。いろんな場所で撮ったんだよ。松竹の担当者がね、後ろでヒヤヒヤしてんだ。浅草寺に行ったら、ちょうど巫女さんがいてね、一緒に撮ってさ。二人とも思っているからね、「(巫女さんの装束の)赤いあれ、まくっちゃおうかなあ」って(笑)。

 そうするとね、言葉では言わないんだよ、ターッと行ってね。ちょっとまくっちゃったりして(笑)。狛犬とかも、でかいのがあるじゃない、そうすると、「あそこにまたがってくれないかな~。法界坊だからなぁ」と思っていると、言わなくても、そこにターッと行ってまたがってくれるの。翌日、謝りに行ったらしいけどね。「昨日、狛犬に乗ったのは法界坊です」って(笑)。そういう相性がすごくよかったね。花やしきに行ったら、ショボいジェットコースターだって何度も乗ってくれたりとかするわけ(笑)。勘三郎さんとは、すごく通じ合っていたような気がするね。

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