田中幾太郎
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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

中学受験の明暗を分ける「最後の1カ月で出来ること」受験のプロが語る“逆転シナリオ”

公開日: 更新日:

「中学受験は最後の1カ月が勝負」と強調するのは、受験業界に関わって半世紀近くが経つ学習塾の経営者。中高一貫難関校の入試は2月初めに集中。都内私立男子御三家(開成、麻布、武蔵)と女子御三家(桜蔭、女子学院、雙葉)はすべて2月1日、最難関の筑波大附属駒場中は2月3日となっている。あと1カ月余り。その間の取り組み方で、結果が大きく左右されるという。

「模試で常に上位にくる生徒は別にして、大半はボーダー付近にいる。残り1カ月の過ごし方で合否が決まるといっても過言ではありません」

 具体的には、どういう対策をとればいいのだろうか。学習塾経営者はこう続ける。

■過去20年分の過去問をひたすら解く

「まずはひたすら、目指す中学の過去問を解く。過去10年間、もし手に入るようなら、さらにそれより前の10年分も解くようにします。20年も前の問題を解いても、あまり役に立たないのでは思うかもしれませんが、そうではありません。特に私立校の場合は、定年まで勤める教員が多く、入れ替わりが少ない。問題の傾向も、それほど大きく変わることがないのです」

 理科と社会については、問題を解く中で、どのジャンルが弱いかがわかってくる。そこを重点的に復習するのである。ただし、理科と社会は得点にあまり差が出ない。もっとも重要なのはやはり、算数と国語。配点も、理科や社会よりも高い学校が多い。開成は算数と国語が各85点、理科と社会が各70点。麻布は算数と国語が各60点、理科と社会が各40点。武蔵は算数と国語が各100点、理科と社会が各60点となっている。

「難関校の算数と国語は暗記で対応できる部分は少なく、付け焼き刃ではどうにもならない」と学習塾経営者は話す。それまで積み上げてきたしっかりした土台がなければ、通用しないというのだ。

「算数と国語については、残り1カ月、過去問を繰り返し解くことがより大切になってくる。難関校の算数と国語は、問題文の意図を理解すること自体、難解なので、そのクセに慣れておく必要があるのです。実際、ものすごく差がつきやすく、この2教科の出来が合否に直結します」

■最後の追い込みで開成中学に合格した子の猛特訓

 ただし、その学校の出題の傾向がわかっても、基礎力が十分に備わっていなければ、合格点に達することはできない。では、逆転はないのだろうか。数年前に息子が開成中学に合格した母親は「12月の時点で、偏差値が60台前半しかなかった」と明かす。開成の偏差値は71(四谷大塚調べ)である。

「算数が苦手だったので、いけないとは思いながらも、冬休みが明けてからも小学校を欠席させて、自宅で猛特訓。私がつきっきりで、一次方程式などを教え込んだんです」

 その結果、わずか1カ月で算数の実力が飛躍的に伸びたという。この母親は国立大医学部の出身で、大学時代は家庭教師の経験がある。だが、ここには2つのリスクが潜んでいると、前出の学習塾経営者は指摘する。

「親が子を教える場合、双方で感情的になりやすく、最悪の場合、家庭崩壊につながるケースもある。また、一次方程式を理解できれば、簡単に解ける問題が多いのも事実なのですが、諸刃の剣。プラスとマイナスを移項するやり方に混乱する子どもが少なくない。たまたまうまくいく場合もあるので、否定はしませんが、無理に教え込もうとするのは避けたほうがいいでしょう」

 大手学習塾の模試の状況から、22年の中学受験者数はかなり増える見込み。悔いがないように、一日一日を過ごしてほしい。


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名門校の真実(リアル)」(日刊現代・講談社 1540円)

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